【場地圭介】狼さんは孤独がお好き (ページ20)

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『ただいま』

三ツ谷君と別れて家に帰り、そう声をかける。

『いつもみたいに夜空を見に行ったのに、この前の剃り込み君に会っちゃってさ、早く帰らないと家族が心配するぞー、って言われた』

仏壇の前に座り、そう話し続ける。

遺影の澪は、楽しそうに笑っていた。

『心配する家族なんか、私にはもういないのに.....変な話だよね。私はまだ、澪がここにいるんじゃないかって、思っちゃってる』

お墓参りは両親だけ。

澪はまだ死んでない。

まだここにいる、私の側にいる。

暗示をかけるみたいに言い聞かせて、家にいてもずっと澪に話しかけている。

我ながら情けないし、馬鹿だと思う。

でも、それでも。澪が死んだなんて思いたくなかった。

あの子には、私と違って未来があった。喧嘩しかできなかった私なんかよりも、ずっと綺麗な未来が。

そんな未来を、私が壊した。

それを認めたくないんだ、私は。

現実から目を背けて、逃げて。

表では強がっているけど、ホントは臆病で。

『..........ごめん。本当にごめんね。馬鹿な姉さんを許して..... 』

泣いたのは久しぶりだった。澪の、葬式以来。

私はその日、文字通り声が枯れるまで泣き続けた。