【場地圭介】狼さんは孤独がお好き (ページ19)

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｢何してんの？｣

視線を夜空から、声のした方へと向ける。

『.....別に、何も』

剃り込み君だった。

特攻服を着ているから、今日も集会か何かだったのだろう。

｢こんな時間に女一人で公園ってのはなぁ｣

そう言った彼は、少し間をあけて私の隣に座る。

追い払う理由がないので仕方ないのだが、大好きな夜くらい1人にして欲しかった。

｢三ツ谷隆。お前は？｣
『.....柊A』
｢柊か。早く帰んねぇと家族が心配すんじゃねぇの？｣

家族、ね。

チラリと彼の横顔を盗み見る。

すると、目が合ってしまった。

謎の沈黙が流れて、私は視線を遠くの街灯にスライドさせながら口を開く。

『家族はいない。貴方こそ..... 』

家族が心配するんじゃないの？

そう言おうとして、思わず口を噤む。

私が言えたことじゃない.....よな。

｢そうだな｣

私が言おうとしたことを察したのか、三ツ谷君は苦笑する。

｢こんな時間だし、ルナもマナも寝てんだろ｣
『.....妹？』
｢そ。生意気盛りの妹｣

聞けば、私と似た境遇だった。

母親はいるらしいが貧乏で、彼が2人の妹の面倒を見ているらしい。

『.....不思議』
｢何が？｣
『貴方は私と環境が似ているのに、こんなにも違うことが』

澪.....貴女がもし、彼の妹として生まれてきていたら。私の妹なんかじゃなかったら。そしたら、幸せだったかもしれないね。

『.....早く帰ってあげなよ』
｢え？｣
『私も帰るから、三ツ谷君も帰りな。妹達が待ってるんでしょ？』

ベンチから腰を上げ、団地の方へと歩みを進める。

『君と話せて良かった。家族は大事にね』

そう微笑んだ彼女は、今にも消えてしまいそうなくらい儚かった。