【場地圭介】狼さんは孤独がお好き (ページ12)

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｢女1人に男が数人で手出そうとしてんじゃねぇよ｣

私を殴ろうとした男が、横に吹っ飛んだ。

声のした方へ顔を向ければ、眉毛の真ん中だけ剃られている男の人。

彼は私を庇うように、前に立つ。

黒の服に、金の刺繍。

東京卍會.....もしかして、トーマン？

名前を聞いたことがある程度だから、詳しくは知らない。

知っているのは、無敵のなんとかさんが率いる、渋谷を拠点としたトーマンというグループが、強いっていうことだけ。

誰だったっけ.....無敵の.....

｢怪我してねぇ？｣

はっとして俯いていた顔を上げれば、私に絡んでいた不良達は1人残さず伸されていた。

『すいません、ありがとうございました』
｢良いよ、場地の女だろ？見過ごせねぇじゃん｣

.....はい？誰が誰の女だと.....？

剃り込み君は私の手を掴み、自身のものらしいバイクまで引っ張る。

｢今日集会だから。場地んとこまで送る｣
『え、あの..... 』
｢遠慮すんなって｣

.....最近の男共は、人の話を聞かないように教育されているのだろうか。

まぁ、圭介君に文句を言いに行くと思えば.....これで、縁が切れるなら。

瓶底眼鏡には似合わないくらいの、眩しい笑顔が脳裏をよぎる。

彼と関わりたくないと思うのは、ただ1人になりたいからだけじゃないらしい。

自分でも、よくわからないけれど。

｢ちゃんとつかまっとけよ｣

剃り込み君の腰に腕を回しながら、そんなことを考えていた。