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トレイくんその28! ページ10



それから私は母の宣言通りリドルとは違う学校へ通うことになった。街外れの辺鄙な場所にある大学付属の女子校で、エレメンタリースクールとミドルスクールをそこで過ごした。毎日の通学で見かける街並みは昔ほど綺麗には見えなくて自分がつまらない人間になっていることをひしひしと感じた。国内外のお嬢様たちが集うその学校ではサッカーもかくれんぼも存在せず、味気ない学校生活を過ごした。そんな中でも可愛くて優秀であった自分は周りから好かれていて、期待の重圧により正直登校するのも億劫だった。だから黒い入学許可証が届いたときは本当に人生大逆転したと思った。

ミドルスクール三年生の秋、トレイがナイトレイブンカレッジへ進学したことを知った。クラスメイトとの他愛ない会話の中、同じ街出身の子が「近所のケーキ屋さんちの長男へ黒い招待状が届いたらしい」と零したのだ。普段は割と上の空で会話を聞き流すAも、それだけは確かに聞き取れた。

『ナイトレイブンカレッジ……?』

「あら、A様はご存じでらしたのね」

『……兄がそこへ進路を希望しているの』

「まあ!そういえばA様はお兄様がいらしたわね」

「とても優秀な方なのでしょう?」

学校でリドルの話をすることはめったになかったが、この時ばかりは兄がいて良かったと心底思った。リドルの進路なんて聞いたこともない。

「A様は私と同じ街の生まれでしたわね。クローバーというパティスリーをご存じで?」

『ええ、そこのイチゴのタルトを昔いただいたことがあるわ。それで、そこのご嫡男がナイトレイブンカレッジに進学したというのは』

上手く会話に潜り込めば彼女らは喜々としてその全貌を話した。噂に聞いた程度であるらしいが、トレイがNRCから入学許可証を受け取ったことは事実だった。彼が魔法を使えるようになっていたなんて知りもしなかったのに。

彼が地元の学校に進学してくれなくてよかったと思った。そのとき初めて自分がトレイに対して抱いていた淡くて綺麗な感情が、自分では扱いきれないおぞましいものに変貌していたことを知った。トレイには友達が多かったが昔は異性の子と仲良くても何とも思わなかった。というよりかはトレイの友人は異性も同性もAからしてみれば等しく邪魔な存在だったというのが正しい。酸いも甘いも噛み分けた今ならば、男の子など自分の敵ではないと分かるのだが。あの頃は良い意味でも悪い意味でも血気盛んだったと思う。

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作者名: | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur  
作成日時:2024年2月15日 21時

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