妹ちゃんは気づかない。３【トレイ・クローバー】 (ページ6)

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トレイくんその２４！ページ6

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その日はリドル不在でトレイの家でケーキをご馳走になっていた。今度はリドルが来たときだな、なんて言いながらいつものテラス席に座る。トレイの親が出してくれたのはチェリーパイで、小さな器に余ったサクランボも入れてトレイが持ってきた。

『初めて食べたけど、やっぱりトレイくんのお父様のお菓子はどれも絶品だわ』

「ありがとう。また伝えとくよ」

「ここじゃAは初めて食べるもんばっかりだにゃー」

『しょっちゅうつまみ食いするキミに比べたらね』

二人が口喧嘩をするのは日常茶飯事だ。それを見て苦笑いをしていたトレイは店にいた母親から名前を呼ばれた。トレイは「ごめん、ちょっと行ってくる」と席を外し、チェーニャと二人きりになる。チェーニャとは特に共通の話題なんてないし軽口を叩き合うくらいがちょうど良いのに、その日のチェーニャは暫く喋り始めなかった。

『キミ、いつもは騒がしいくらいなのに今日は借りてきた猫みたいじゃない。どうかしたの？』

「んや別に？そういう気分ってだけだにゃあ～」

『そう？やっぱり変な子』

そう言ってまたチェリーパイにフォークを伸ばせば、彼は突然「そういえば」と言った。

「サクランボの茎を口の中で結べるヤツはキスが上手いんだぜ」

『なにそれ。どういうこと？』

Aがしたことあるキスと言えば、母や兄がおでこや頬にしてくれるフレンチなものだ。あんな軽いものとサクランボの茎を口の中で結べることのなにが関係あるのか、単純な知的好奇心だった。チェーニャがべっと出した舌の上ではサクランボの茎が結ばれている。

「なぁに、どういうことか知りたぁの？」

『ええ、キミのしょうもない嘘なら時間の無駄だけれど、本当なら因果関係が知りたいわ』

「フゥン？じゃ、こっちへおいで」

Aは椅子を降りて向かい側へ回った。どういう仕組みで結ばれているのかその工程を見せてもらえるのだと思っていた。
椅子に座る彼を見上げて「説明して」と言えば、「見せるよりする方が早い」と彼は言った。私の後頭部に手が回ってぐいっと引かれた。はむ、と唇をやわく噛まれて彼の薄い舌が口の中へ侵入して目の前が真っ白になった。
口内をざらざらした舌が這いずり回って反射的に彼の胸を押し飛ばした。椅子から転げ落ちたチェーニャを数秒見下ろしていれば、店の中からトレイの声が聞こえた気がした。呼吸が上がって思考が上手く回らない中、Aは振り返って駆けだした。彼らと遊んだのはそれきりだ。