妹ちゃんは気づかない。３【トレイ・クローバー】 (ページ5)

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トレイくんその２３！ページ5

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それからリドルも一緒になって遊ぶようになった。といっても、毎日一時間だけ与えられる自習時間のうちだけ。それでもAの顔からはすっかり憑き物が落ち、それを見てトレイもホッとしていた。

『リドルがね、最近家でも明るいんだ。トレイくんのおかげだよ。あとまあ、猫ちゃんも』

「大したことなんてしてないよ。それにしてもA、いつまでたってもチェーニャに懐かないなあ」

『だってすっごく追いかけ回してくるし』

「Aが可愛いからだよ」

『それはそうだけど……』

チェーニャの家のそばの公園で追いかけっこをしていた。遊び疲れたチェーニャが芝生に横になって眠りだしたのを皮切りに、リドルもちょうど良い木陰につられて眠ってしまった。トレイとAも仰向けになって青い空を眺めながら二人が目を覚ますまで駄弁っていた。

『大きくなってもずっと四人で遊んでたいな……』

「うん。大人になったらこんな小さな公園とか俺ん家なんかじゃなくて、もっと遠いところまで行けるよ」

『それって例えば？』

「う～ん。もっと発展した街で遊んだり、海外で旅行したり？」

『ふぅん。私は今のままが一番楽しいかな』

空をなぞるように雲が流れていく様を見つめながらそう呟いた。この関係がいつまで続くか分からないことは理解していた。いつか来る別れに思いを馳せ、ごろんと寝返りを打つ。同じく空を眺めていたトレイがこちらからの視線に気が付いて「どうかした？」と言った。

『トレイくんは私のことしつこく追いかけないよね。なんで？』

「なんでって……」

『だって私可愛いのに』

純粋な疑問だった。トレイとチェーニャの他に友達なんていないし、友人関係の距離感なんて知り得ない。じっとトレイの顔を見ていれば彼は照れた頬を指でかきながら「え～？」と言った。

「俺はAに好かれていたいからAの嫌がることはしないよ」

『そうだね。トレイくんに嫌なことされたことないや』

「だろ？知らなかったかもしれないけど、俺はAのこと結構特別扱いしてるよ？」

『特別扱い？』

トレイは身体をこちらへ向けて私の髪に触れた。ちょっとだけドキッとして肩が揺れた。

「俺にとってAが特別な女の子だから」

はにかむトレイの意図は分からなかったが、好かれているということは分かった。トレイには沢山女の子の友達がいるけれど、その中の特別になれていたことが嬉しくて私も同じように笑った。