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兄貴その50! ページ19



その日の内にフロイドと無期限の接近禁止令を言い渡された。同じクラスではあるが授業がほとんど被っていないので指示されずとも会うことはないだろう。普通に学校生活を送って初めて「フロイドが私に構いに来てくれていた」ということを自覚した。教室移動の途中、重い教科書を抱えて廊下に溜息を吐いた。

「ん、Aセンパイ?」

『あれ、エースちゃんにデュースちゃん』

「身体の方はもう大丈夫なんですか?」

可愛がっている寮の後輩に声をかけられ立ち止まった。二人も教室移動かと尋ねれば「クルーウェルのパシリ」とエースが悪態つくので「クルーウェル先生でしょうが!!」と指導した。

「それにしても、A先輩ってフロイド先輩いないとマジでボッチなんすね〜」

「おいエース!すみませんA先輩……でも本当に珍しいですね、一人なんて」

『誰がボッチよ。失礼しちゃうわ』

第三者から見てもニコイチの関係だったのだろうか。もやもやと募る複雑な感情がわだかまりを成してそのまま顔色に出る。逃がした魚は大きい、とはまた意味が変わってくるが大体そんな感じ。教材を抱える腕にキュッと力を入れた。そんな私をエースは何かもの申したそうに見下ろしていた。

「まー最近のA先輩の様子が変なのは勘づいてたし、オレは若干フロイド先輩の肩持ってるけど」

「エースお前っ……」

「デュースだって言ってたじゃん。ちょっと前からトレイ先輩とよそよそしかったのも、あんだけトレイ先輩好き好きアピしておいてあのチェーニャとかいう意味わかんねーヤツと付き合ったのも、オレらがなんも気づいてないとでも思った?」

『何が言いたいの?』

下から睨めつけるように額にしわを作って彼を見上げれば、彼は「べっつに〜?」と肩をすくめてみせた。隣でオロオロしているデュースを手で抑制してエースに続けさせた。

「オレは別にアンタがどうなろうが知ったこっちゃないけど、周りの信頼失う前に行動改めろよって話。現にもうフロイド先輩とはバチッたみたいだけど」

『ご忠告どうも。知ったこっちゃないって言う割に私の身を案じてくれてるみたいね?』

「アンタがこれ以上問題起こしてうちの女王様の機嫌損ねないようにするためだっつの」

彼は隣の友人に肩をぶつけて「行こうぜ」と踵を返した。デュースは眉尻と口角をこれでもかというくらい下げ、会釈をしてエースの後を追った。去って行く生意気な背をジッと睨んでフンと鼻を鳴らした。

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作者名: | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur  
作成日時:2024年2月15日 21時

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