トレイくんその３３！ ページ15
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「キミに入学許可証が届いたことが既におかしいのに、キミが進学先を変えたことも、それをお母様が許したのもボクは納得がいかないよ」
『そうだね〜』
「ボクの話ちゃんと聞いてる？」
彼の髪をいじりながら「うんうん」と言えば、彼の目は尚更細まった。
『どうしても行きたかったの。ずっと言ってるけど、私には学校もこの御屋敷も息苦しい場所には変わりないから』
「だからって、共学の学校ならまだしも……」
『でもリドルが守ってくれるでしょ？』
そう言うと彼はカチンコチンに固まった。「自信ない？」と聞けば彼は「そんな訳ないだろう」と断言する。本当に扱いやすい。
「確かにボクのそばにいたら守ってやれるけど……」
『守ってもらわなくても私結構強いけどね』
「キミが優秀なのは知っているよ。だけど」
『リドルのそばにいるって言ったからお母様が許してくれたのよ？』
まあほとんど顔の可愛さでゴリ押ししたのだが。「お兄様から離れないから」と懇願すればなんだかんだ私に甘いお母様は珍しく青くなった頭を抱えながらも許してくれた。
暫く沈黙していたリドルは何か苦いものを飲み込んだような顔をした後、今度は諦めたように溜息を吐いた。
「……まあ、ボクもキミと過ごせる時間が増えるのは嬉しいよ」
『え。いや、別行動だけど』
「お母様に話を通してくる」
『うそうそうそ！！！お兄様大好き！！！』
出て行こうとするリドルの腰にしがみついて止めれば、彼は「こういう時だけお兄様って……」と折れてくれた。本当に甘くて助かる。
「ボクももう寝室に戻るから離してくれないかい」
『おやすみのチューは？』
「もう手遅れだからね」
今更可愛こぶっても意味がないらしい。ちぇっと悪態ついていれば「やめないかい」と止められた。彼の腰に回していた腕を離せば額に軽くキスをされる。
「おやすみ。今日はゆっくり眠って明日またちゃんと考えればいいからね」
『……明日になっても、意思は変わらないから』
「そうかい。それならそれでボクは楽しみだよ」
私がベッドに潜ったのを確認してリドルは部屋の明かりを消して出て行った。私は身体を小さく丸めて瞼の裏にトレイの姿を思い浮かべた。
自分で想像していたよりもずっとカッコいい男の子になっていたし、何より彼が私を覚えていたことが嬉しかった。入学が待ち遠しい一方でチェーニャがRSAだったことに心底ホッとした。自分の醜い感情にそっと蓋をするように眠りについた。
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作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2024年2月15日 21時
