妹ちゃんは気づかない。３【トレイ・クローバー】 (ページ14)

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トレイくんその３２！ページ14

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『あ、あの子ももしかして、ナイトレイブンカレッジなの……？』

その声は怯えるようにか細く震えていたと思う。出来るだけ平然を装ったが口角はピクピクと揺れていた。トレイは気付かず「いや」と言った。

「チェーニャはロイヤルソードアカデミーだ。知ってるだろ？ナイトレイブンカレッジの向かい側にある名門魔法士養成学校。チェーニャはそっちだよ」

ほっと身体の力が抜け為息を吐いた。もし同じなのだとしたらもう一度進路を考え直すところだった。スマホをすいすいと使いこなすトレイの手を上からガバッと押さえつけた。

『ご、ごめん。もうそろそろ帰らなきゃ……』

「え、もう？こんなに明るいのにか？」

『ごめん。お母様に怪しまれちゃうから……それに、入学許可証の話もしてないし……』

しどろもどろになりながらもそう説明すれば彼は残念そうに「そうか……」と呟いた。トレイからすればAもチェーニャも等しく友人で、またあの頃のように三人でワイワイしたいという気持ちがあったのかもしれない。だけれどあの時、チェーニャと私は越えてはならない一線を超えてしまった。もう怖くて顔も見たくない。まだ私は振り切れていないのだ。

「屋敷まで送るよ」

『大丈夫。私よりもおうちのお手伝いしてあげて。すごく忙しいでしょ？』

「あー……気を遣わせて悪い。外まで送るよ」

『ありがとう』

トレイに見送られて屋敷へ戻った。出てきた抜け穴へ戻って行けば、ボロボロになったパニエが落ちていてどうしようかと溜息を吐いた。

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「キミ、どうやってお母様を丸め込んだんだい？」

丸め込む、とはとても人聞きが悪かった。就寝前、髪にブラシをかけている時部屋に訪問者が現れた。こんな時間に来るのは決まって母なのだが、今日だけはリドルだとどこか確信していた。「どうぞ」と言って招き入れれば間髪入れずにそう言われた。

『どうやってって、この可愛さで丸め込んだに決まってるでしょ？』

きゃぴ！とふざけてみると、いつもなら「そうだね」と真剣な顔をして言う癖に今日は少し納得がいかないような顔をしていた。

「女子校育ちのキミが男子校に進学って、気が違ってしまったのかと思ったよ」

『言うじゃない』

ベッドに座る私の隣に彼は腰掛けた。私のことが世界で一番好きなのに同じ学校へ通えることが嬉しいとか思わないのだろうか。
不貞腐れたような顔をするリドルの髪にヘアブラシをゆっくりかけた。