トレイくんその３０！ ページ12
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驚いて立ち尽くす私に対し、トレイは驚きながらも自転車を押しながらこちらへ近寄ってきた。私のことを覚えていてくれたのも話しかけてくれたのも嬉しいはずなのに、想像よりずっと格好良く育っていて上手く言葉が出てこなかった。
「驚いた……何年ぶりだ？どうしたんだ急に」
久しぶりに会った彼は想像を遙かに超える好青年になり私の目の前に現れた。短い髪も筋肉質で骨張った腕も白い歯も彼を構成する全ての要素が魅力的で、全身に雷に打たれたように脳がヒリついて動けなくなった。私の持つ精一杯の力を振り絞って「久しぶり」と言えば彼は嬉しそうに「ああ」と頷いた。
『び、びっくりした。すごく身長が伸びてるね……170�僂�らいはある？』
「あはは、もっとあるよ。だけどまだまだ成長中。Aもすっごく大人っぽくなったな」
「お転婆なのは変わってないみたいだけど」と言いながら彼は私の髪へ手を伸ばした。どうやら髪に木の葉が乗っていたようで「どこを通ってきたんだよ」と笑われてしまった。
『キミたちが教えてくれた抜け道だけれど』
「あの穴を！？A、まだあそこを通れるんだな」
『キミと違って大きくないからね。パニエは壊して置いて来ちゃったけれど』
「大胆なのも変わってないみたいでなんだか嬉しいよ」
どうしよう、今私トレイくんと喋ってる。浮かれすぎて当初の目的を忘れてしまいそうだ。背中側に隠した黒い招待状を強く握った。
『あのね、ト……』
私はふと、昔とは違う彼を昔のように名前で呼ぶのが恥ずかしくなった。
「すまない、ちょっと時間あるか？今母さんにパシられてたところでさ。これ渡したらすぐ戻ってくるからテラスのとこ座って待っててくれ」
『でも私、お財布もなにも持ってきてないよ』
「そのくらい奢るって。すぐ戻る！」
彼は袋いっぱいのオレンジを抱えて店の奥へと消えてしまった。何も頼まずに席に着くのは何だか落ち着かずソワソワしていれば、小さい子供がティーセットを持って現れた。家の手伝いかと思って褒めてやれば二人は嬉しそうに店へと戻っていった。暫くして帰ってきた彼は向かい側に座った。
「うちのチビたちが邪魔してないか？」
『いいえ。キミもすっかりお兄ちゃんじゃない』
「いや、結構舐められてるよ」
『ふぅん、やっぱり兄貴って呼ばれたりとかするの？』
「はは、そこまでじゃないよ」
彼の一挙一動にドキドキして「じゃあ私が呼ぼうかな」なんて意味が分からないことを口走った。
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作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2024年2月15日 21時
