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トレイくんその20! ページ2



『出てみたい、外に』

「A、本当?」

今までそんな素振りを見せたことがなかったのでトレイはそう確認した。屋敷から出ればもっと沢山のことができるに違いないし、もっと色んなことが知れる。
Aがもう一度うんと言う前にチェーニャは二人の手を引いて「じゃ、しゅっぱーつ!」と庭を抜け出した。Aは二人が普段使っている抜け道を案内され、最後尾を四つん這いで進んだ。どんどん暗くなるウサギの巣穴のようなその道に不安を覚えたけれど、抜け出てみれば外はとても明るかった。
そこで見た景色は母と乗った馬車の窓から覗き見た景色と全く別に見えた。色鮮やかで賑やかで、まるで違う世界だ。

「なーなートレイー、腹が減ったにゃー」

「チェーニャ……さては最初からそのつもりでAを外に誘ったな?」

『そのつもりって?』

二人の会話に入り込めないAがそう尋ねれば、トレイとチェーニャは一斉に振り返った。そして二人で目を合わせた後もう一度Aの顔を見た。

「俺ん家ケーキ屋だって言っただろ?食べに来いよ」

『え、でも私何も持ってきてないよ』

「トレイんちのケーキは全部タダだにゃー」

「そんなわけないだろ。ただちょっと、味見係が必要なときがあるんだよ」

それが彼の親が考えた甘やかしの理由だということにAはすぐに気が付いた。しかし他人から純粋な厚意を受け取ったことがないAは本当に良いのか迷った。グズグズしているとトレイが強引に手を引いてくれた。

彼の家に着けばまずテラス席に案内された。二人でそこで待っていてと言われ、その通りに大人しく座る。チェーニャは足をバタバタさせて楽しみだと言った。

「おみゃーはなんのケーキが好きなんだにゃー?」

『好きなケーキ?ええっと……』

普段食べることがないから咄嗟に答えることができない。こういうとき、トレイが普段自分にどれだけ気を遣って話しかけてくれているのかがよく分かる。チェーニャがちょっと特殊なのもあるが。
Aが答えてしまう前にトレイが戻ってきた。彼はニコニコ笑いながら「中に入ってショーケースから選べって」と言った。

「そんなの俺は言われたことにゃーのに」

「当たり前だろ。チェーニャは食い過ぎ」

『待って、本当に良いの……?』

恐る恐るそう尋ねれば、彼は一度きょとんとした後また笑顔に戻って「イチゴのタルトもあるぞ」と言った。彼が自分と初めて会ったときの会話を覚えてくれていることが一番嬉しかった。

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作者名: | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur  
作成日時:2024年2月15日 21時

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