海の生命 ページ8
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『それで、これからどこへ向かうんですか？』
「珊瑚の海の観光名所、アトランティカ記念博物館だ」
目の前に広がる既視感のある建物に、Aは目を丸くした。
『……デート？』
「命が惜しくないのか」
それ以外に理由が思い浮かばなかった。いやだって、失礼なことを言うが、ちょっとユーゴ先輩て私に気がありそうじゃないか。かなり失礼かもしれない。
「寮長がモストロ･ラウンジ研修旅行という名目で今日、博物館を貸し切っている。」
『つまり？』
「そこへ乗り込む」
『結構無理やりですね！？』
完全に置いてけぼりのAを本当に置いていき、ユーゴは出入口の所に立っている警備員らしき人魚の人へ声をかけた。おそらく自分たちがモストロ･ラウンジの社員ということを話しているらしい。嘘ではないが、招待された訳では無いので少し緊張する。
ユーゴが話をつけたのか、ついてくるように手招きをした。Aはコバンザメのようにユーゴの後ろにくっついて博物館の中へ入った。
『前来た時は外からしか見てなかったんですが、中も結構しっかりとした博物館ですね……』
「ああ、人魚属なら一度は訪れておきたい場所だな。僕も初めて来た」
広々とした空間に太陽の光が差し込み、中央にある伝説の海の王の像を神々しく照らしている。いかにも貴重そうな宝石からガラクタのようなものまで、色々なものが展示されていた。
『海って綺麗ですね、先輩』
もう二度と見ることがないだろうと悲観していた。魔法薬で朦朧としていたが、あの時に見た感動は本物で、今でも覚えている。そして今は、海の中の歴史や文明に胸を打たれ感動している。
Aの言葉に、しばらく返事がなかった。Aは視線を展示物からユーゴに移した。彼はまっすぐに王の石像を見つめていた。
「……キミの周りを取り巻いているその酸素、」
『……はい？』
「それは海の中の珊瑚や海藻たちが光合成をしてできた酸素。珊瑚の海が豊かな自然に恵まれている証だ。」
彼の言った言葉の真意が自分の想像したものの通りかは分からないが、Aは彼の生まれた故郷がどんな場所であったのか、知りたくなった。彼が寂しそうに目を細めている理由が、Aには分からなかった。
「酸素だけを長時間吸っているとそれこそ死ぬから急ぐぞ」
『ちょっと、やめてくださいよ！』
自分だって立ち止まっていた癖に。Aは彼の背を追い、同時に、彼のことを何も知らないことに気がついた。
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天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
