薔薇と荊棘 ページ49
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打たれた所がヒリヒリと痛いのは身体が強ばっているからだろう。Aは右肩を擦りながら身体を起こした。興奮しているのか、立ち上がってこちらを見下ろすエースの目はギラギラと勇み立っている。我に返ったリドルが「エース！」と彼の名を呼んだので、Aは何も言わなくていいと手で止めた。
Aは寮服の皺を払いながら「エースさあ、」と立ち上がった。ヨロヨロと覚束無い動きをして油断させ、そのまま拳を振り上げた。
『痛いんだよこの馬鹿！！！』
活きのいい弾けるような音がパーティー会場に響いたのと同時に、彼の「痛っっっ！！！」という声が耳に入った。
Aは先程まで見上げていた彼を今度は見下ろしていた。芝生に尻もちをついて頬を抑えていた彼はキッと顔だけ上へ上げた。Aは行き場をなくした拳を下ろした。
「お前さあ！グーはないでしょグーは！！女子だったら平手打ちとかしろよ！！」
『私のこと女子だと思ったことなんてない癖に』
Aはエースの手を引っ張って立ち上がる補助をした。デュースも席から立って「早く冷やさないと」とアイスティー用の小さな氷を袋に詰めて氷嚢を作っている。手際の良さは部活のおかげなのか、はたまたミドルスクール時代の名残りなのか。
ケイトやトレイは未だにポカンとしている。するとリドルが立ち上がって、こっち側へ駆けてきた。「見せてごらん」と頬を引っ張って口の中を覗いた。
「いででででで」
「良かったね、口の中は切ってないみたい」
『今かなり致命傷与えませんでした？』
Aもエースの頬をじっと見つめたが、派手な音で鳴ったわりにそこまで酷くはなっていなかった。デュースから氷嚢を受け取り、ハンカチで包んでエースの頬に躊躇なく当てた。彼は声こそ上げなかったがかなり情けない顔をした。
「手加減とかねーわけ？」
『このくらい痛かったもん』
「嘘つけ、頑丈な癖に」
『……肩じゃなくて、ここが』
Aは自分の左胸に手を当てた。突き飛ばされた時にギュッと締め付けられるように苦しくなったそこは、まだ高く鼓動を鳴らしている。エースは少し口をまごまごさせた後「あー！」と声を荒げて吠えた。
「ごめんって。ほら、お前も謝れよ」
『うん、ごめんね』
Aたちが和解すると皆ホッと胸を撫で下ろした。
触れようとすればするだけその棘が身に食い込む、茨のような女だ。だから、こんなにも痛い。リドルは改めて彼女の本質を思い知った。
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天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
