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薔薇と茶話 ページ44



ティーカップに角砂糖を二つ。この丁度いい甘さが、今のAのマイブームだ。香り高い紅茶を口に含むと、豊かな甘みが穏やかな波のようにAを包み込む。リドル直々に紅茶を淹れてもらえるなんて役得だ。

「学園生活には慣れた?」

『ええ。頼れる友人と尊敬できる先輩がいますし、毎日が新しいことの連続で、本当に有意義な時間を過ごせています』

「それは良いことだ。流石はボクが見込んだだけのことはあるね。」

『ありがとうございます』

「……話が変わるけど、エースやデュースのクラスでの様子はどうなんだい?」

Aはおやおやと目を見開いた。彼がこんな露骨な発言をするなんて、とても思わなかった。リドルは「ボクが後輩を気にかけるのがそんなにおかしい?」と不服そうに目を細めた。

『いえいえ、リドル先輩が後輩思いなのは知っていますよ』

「何だか癪に障る物言いだね……」

「まあいいけど」と彼は不機嫌そうに瞼を下ろした。Aはそれが少しおかしかった。

『……エースとはお互いに本音でぶつかり合える仲で、私の悪いところをはっきり言葉にして教えてくれたり、態度は大きいけどいつも助けてくれるので、頼りにしています』

「そうだね。ボクも彼のそういうところに助けられたよ」

彼が言っているのは、オーバーブロットの時の話だろうか。Aは自分が駆けつけたときにやけにしおらしくなっていたリドルを思い出した。後から聞けば、相当エースに絞られていたらしい。Aはくすっと笑った。

『デュースはいつもまっすぐで素直で、エースのように本音をぶつけてくる訳じゃないんですけど、心配してくれてるのが顔を見たら分かるので……』

「あの子自身、ほっとけない部分はあるからね」

意外でもないが、寮生のことをよく見ているなあと、Aは嬉しくなった。寮長歴が長いだけある。というより、彼の元々の性質だろうが。

『リドル先輩は、私が転寮してもよく気にかけてくださって、優しくて頼りになる、尊敬している先輩です』

「ボ、ボクのことは良いから……」

リドルは少し困ったようにそう言った。しかし、その顔は嫌がっているようには見えなかった。Aは皆の顔を思い浮かべ、ふと気が付いた。

『思い返せば周りに不安そうな顔をさせてばかりでした……』

「キミのは決断力じゃなくてただの無鉄砲だもの」

分かってるなら心配かけさせないでと、彼は少し責めるような声で言った。Aは「はい、寮長」と返事をした。

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天(そら)(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur  
作成日時:2023年5月14日 15時

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