薔薇と秘密 ページ43
･
「それでキミ、もうあの件は解決したの？」
あの件、とはどの件のことだろうかと、Aは一瞬迷った。おそらくAへの嫌がらせ行為の犯人のことだろうが、他の心当たりが多すぎる。一応その話題に目星をつけ、彼に報告する。
Aは一度ティーカップをテーブルへ戻し、ピッと姿勢を正した。彼も口へ運んでいたカップを止めて、こちらを見た。
『ええ。ご存知の通り、ユーゴ先輩は無実が証明され、他の容疑者が浮上しました。犯人は寮長と学園長を交えた話し合いの末、自主退学する運びとなりました』
「そう……大変だったね」
「キミ自身に被害がなくて良かった」と、リドルは安心したように言った。正直、まだ彼のことを思い出して眠れない日はある。自分がオクタヴィネル寮へ来ていなければ。そう思っているはずはないのだが、ここ最近は転寮する前の夢をよく見るようになった。
「A、手を見せてくれないかい？」
『手、ですか？』
Aが彼へ手を差し出すと、彼は無遠慮にAのグローブを剥ぎ取った。Aがギョッとして「先輩！？」と言ったにも関わらず、彼はじっとりとAの手のひらを見つめた。そんなに見つめられたら手に穴でも空いてしまいそうだ。彼は責め立てるような目つきでAの顔を見た。
「怪我してる……いつからだい？」
『えっと、部屋が荒らされてた日に、割れたガラスで……』
「ちゃんと破片が入ってないか確認した？どうして治癒魔法を使わなかったの？」
矢継ぎ早に質問されるので、Aはどもってしまった。流石は名医の息子というだけあり、人の怪我や変化には特別敏感。その目と口ぶりはさながら魔法医術士である。
『今は魔法の使用を控えていて……』
「……そうだね、変なことを聞いてすまない。」
学園内でオーバーブロットが頻発している。その先駆とも言えるリドルだからこそ、咄嗟にAの意図に気が付いた。しかし、理由はそれだけではない。
彼はAの手に治癒魔法を施した。怪我から時間が経っているとはいえ、かなり綺麗に治った。Aは「ありがとうございます」と、手のひらをさすった。
『昏睡状態も長かったですし、取り敢えず安静と回復の為にホリデーまでなるべく魔法を控えるようにしています』
「キミは茨の谷育ちな訳だし、魔法がないと不便じゃ？」
『いえ、こうして助けてくれる先輩や仲間がいますし』
そう言うと彼は満足そうにカップを口へ運んだ。ちなみに大釜を召喚したことは秘密だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
