真夜中の失恋 ページ41
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パチパチと暖炉の火が心地よい音で鳴る。揺らめく焔をぼうっと見つめてとろりとした気分になっていた監督生の耳に、冷たい言葉が入った。
『……本当はね、会えるかなって期待してた』
「シルバーさんに？」
墓穴すぎる。眠たくなっていたのでほとんど脳死で答えてしまった。自分の言葉でハッと頭が冴える。そして追い討ちをかけるようにAが何の気なく「うん」と答えたので、頭を殴られたようなショックを受けた。自分も今夜は眠れないかもしれない。
Aは薪を継ぎ足しながら、「意外と会えないもんだよねー」と他人事のように言った。Aがこういう感情のない言葉を口にする時、大抵心は傷ついている。
『私が眠ってた時、目が覚めるまでずっと待っててくれてたみたいで、それが本当に嬉しかったんだよね』
暖炉の見つめるAの瞳は、炎が揺れる度にメラメラと揺れた。炎よりも赤い瞳は、アデニウムが咲いたようだ。
俺もずっと待ってたよ、なんて言う勇気もない。そんな無責任なことを言って何か生まれる訳でもないし。監督生はため息をつきそうになるのを堪えた。
『……あの時もまた逃げちゃったんだ。いつも逃げるのだけは得意で。』
「そうだね、逃げ足だけならツイステッドワンダーランド１速いと思うよ」
『あは、よく言われる』
彼女が投げた薪がカランと暖炉へ落ちた。また二人の間に静穏が訪れ、炎が弾ける耳当たりの良い音が流れた。暫くして、彼女は独り言のよいに呟いた。
『会うまでは言いたいこといっぱいあったんだ。でも、いざ話すってなると色々回りくどいことしちゃう』
「乙女だね〜。何話したかったの？」
『……眠っている間、あなたをずっと夢に見てたって』
それ、恋だよ。
言ってしまいたい。彼女の恋路をまっすぐに応援したい。だけど、彼女の隣に立つのは自分でも良いんじゃないかって思ったりする。欲張った気持ちが彼女の恋をじゃまするなら、いっそ忘れられた方が楽なのに。君はこうやって自分を頼って、喜ばせる。
片恋の辛さなら自分がよく分かっている。なら尚更彼女を応援すべきではないだろうか。そんな監督生の心知らず、Aは無邪気に尋ねた。
『ねえ、眠たくなってきた。泊まっても良い？』
「寮長に言わなくていいの？」
『早朝に帰ったらバレないよ』
君を応援したいのだ。自分にこれ以上付け入る隙を与えないでくれ。監督生は切に願った。しかし同時に、どうか自分のものになってくれと、その内懐では冀っていた。
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天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
