先輩A ページ34
･
「真面目で良い奴だったよ。過干渉はしないタイプだが、挨拶と礼や謝罪は本当にきっちりしていた。陸での生活作法なんかはほとんど彼から教わったし、まさかこんなことをするだなんて初めは信じられなかった」
彼はポツリポツリと話した。そうだ、ユーゴ･アンドレアは気持ちが悪いほど陸の生活に順応していることで有名だったのだ。Aは点と点が線で繋がったようですっきりした。
「だが、日を増す事に口数が減っていって怪しく思ったよ。何度も”クローゼットだけは触るな”と釘を刺されたし、誰にでも隠し事はあるだろうが……」
『それで開けたんですか？』
「ああ、犯罪ごとだったら問い詰めようと思ってな。実際そうだっただろ」
『先輩、意外とそういうとこありますね……』
人の椅子を後輩に貸して、自分は自分の椅子に座るところとか。Aはあはは、と苦笑いをした。
「問い詰めようと思ったよ。でもここで僕がアイツを裁くよりかは、A本人が処分を決めた方がいいだろうと。そしたら、偶然キミが眠り、アーシェングロットがオーバーブロットして寮内は大荒れ。それどころじゃなくなったさ。」
『その節は大変ご迷惑をおかけしました……』
そうだ、アズールにオーバーブロットの件についても聞かなければならないのだ。Aはチラッとアズールを横目で見た。すると二人の視線がバチッと交わり、アズールは気まずそうに目を逸らした。
『それで最近気にかけてくれてたんですね』
「まあな。コイツらに謹慎が出ている以上、キミを守れるのは僕くらいだし」
VIPルーム専用の華美なティーカップに口をつけて、彼はそう言った。アズールは悔しそうな、でも言い返せないという表情で彼を見た。
『アズール、そんなに睨んだらダメよ。ユーゴ先輩、私が目覚めてから何度も助けてくれてたんだから』
「それはアトランティカ記念博物館の件でしょうか」
ジェイドの言葉にAとユーゴはアズールから目を逸らした。この状況でその話題をぶっ込めるお前の精神を疑う。Aはジェイドの足をギュッと踏み潰した。しかし時すでに遅し、アズールは「そういえば……」と口を開いた。
『つ、次は私が話します！！！』
「……まあこの話は後で、ユーゴさんがいなくなってからでも良いでしょう。どうぞ、Aさんの番ですよ」
『ユーゴ先輩〜！』
「知らん」
一人で責められるくらいなら二人で追及された方がましだ。Aは掘った墓穴をどうにか埋めたかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
