クローゼット ページ29
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「僕はそんな卑怯で無意味な真似はしない」
疑われたことに対して不機嫌を表す彼は、少し年相応にも見えた。つり上がった眉も、少し尖った口先も、彼は無意識なのだろう。不愉快な思いをさせてしまったことも、かえって彼の新しい一面を知れる機会になった、なんて締めくくってみる。
Aはホッと安堵の溜息を吐いた。彼が犯人でなくて心底安心したと同時に、では真犯人は誰なのかという新しい壁にぶち当たった。安心の絶頂から一転、また闇の底へ突き落とされた気分だ。
Aが百面相していると、ユーゴは突然ピタリと静かになった。Aは何事かと首を傾げたが、彼がバッと部屋の扉の方へと向いた瞬間に、扉の向こうの気配に気が付いた。
不躾なほど連続的に、かつ暴力的な音が部屋に響いた。ノックと呼ぶには恐ろしすぎる、強気な挨拶。
Aはユーゴに腕を引っ張られるように立ち上がった。もう一度腰の警棒に手を伸ばそうとしたが、ユーゴはAを自分の後ろへ押しやった。
『せ、先輩……』
「シー……、僕の言うことを聞け」
彼は瞳だけ扉の方向へ向けたまま、Aに指示を出した。その間も破壊的なノック音は空気を丸々恐怖へと変えるように鳴り響いた。
この状況では彼の言うことに従うしかなかった。「何も言わずに、僕の後ろへ回れ」その言葉に従い、Aはユーゴの後ろへ隠れるように回った。彼はそのまま小声で、ほとんど口先だけで喋るようにして話した。
「キミに嫌がらせを繰り返している男の正体を、僕は知ってる」
『え……』
「今日だって、その話をしようとして……」
彼には悪いが、そんなこと全く勘づけなかった。不甲斐ない。Aが一瞬落ち込む隙を作ると、またを壊しそうな勢いで向こう側の誰かが扉を叩いた。
「右のクローゼットを開けてみろ」
『右って、』
「……僕のルームメイトのクローゼットだよ」
Aは彼に言われるがまま、クローゼットの前までコソコソ進んだ。ちらりとユーゴの方を見れば、彼の目はまっすぐ扉だけを見つめていて、マジカルペンを持ったその手は、微かに震えている。Aは扉に手をかけた。
いきなり背中に氷を入れられた時のような、そんな冷たさ。クローゼットを開けることへの恐怖、嫌な予感が、Aの背を風のように過ぎった。額に冷や汗が滲み、ゆっくりとその扉を開いた。その時Aは、これまでユーゴが言ったこと、辻褄の合わない周りからの証言、この部屋の違和感すべてが腑に落ちた。
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天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
