決意と逃亡 ページ3
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大きな北風が吹き涼しいと感じた時、Aは自分の顔が火照っていることに気づいた。どんどん血が上っていくので顔を両手で覆って隠してしまいたいのだが、生憎両の手は彼に包まれている。そこへ畳み掛けるように彼が小っ恥ずかしい言葉をつらつらと並べていった。Aはほとんど限界だった。
「これからは泣かなくて良い。そばにいるから」
彼はAの泣き跡を親指で擦って言った。今度は恥ずかしすぎて泣いてしまいそうなのに。
Aは人の情に流されやすい所があった。しかし、このままでは変われないと、自分の足で進むことを決心したのだ。
『……私、シルバーのことが好きだよ』
彼の手をギュッと握り返した。ちゃんと彼の目を見て、はっきりと伝えた。彼は目を大きく見開いて、驚きを隠せない様子だった。心がきゅっと切なく、苦しくなる。
『親父殿のことも好き。マレウス様のことも、セベクのことも好きよ。だから怖かったの』
あんたの言葉で傷ついたと同時に、図星だった自分が嫌になった。だから、変わろうって思ったんだよ。
強い風がAの髪を舞いあがらせた。入学した頃に比べて随分可愛らしくなった髪は、Aの視界を邪魔した。風が吹きやんだ時、Aの目に映ったのは、少し落ち込んだように眉を下げたシルバーだった。
『あたしは、ちゃんと自信を持ってあんたの隣に立ちたい。親父殿の娘だって、胸を張って言いたい。』
だからまだ、皆のところにはいけない。Aはシルバーの手を離して、そう言った。
本当は今すぐ彼の胸へ飛び込んで、彼と共に寮へ行って、父に会いたい。今までのこと全部謝りたい。だけど、私はまだ、許されてはいけない。私はまだ、オクタヴィネル寮でやらなければいけないことがある。
『みんな心配してくれてるけど、私はオクタヴィネル寮のことが好きなんだよ。アズールのことも、ジェイドのことも、フロイドのことも。』
初めて自分の手で掴み取った居場所だ。あんなに居心地がいいところをみすみす手放すなんてことはできない。
『……今回の事件は、まだ本人たちと話してないからどうなるか分からないけど。私は怒ってないから』
Aの話を最後まで聞いて、シルバーは「そうか」とだけ言って頷いた。二人の間の沈黙が、Aの不安を煽った。
『そ、それだけです！じゃあね！！！』
「は？おい……」
持ち前の脚力と瞬発力で脱兎のごとく逃げた。本当に、逃げ足だけは速いとまた呆れられてしまうのだろうか。
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天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
