廃墟になった部屋 ページ14
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水中を空気がかき分けて空へ上っていく音が心地よい。辺り一帯が陶器のように白く、青い。ガラス越しに見えるのは、巨大な魚に擬態する小魚の群れ、エラを開けては閉じる大人しいサメ、色とりどりの魚たち。珊瑚や海藻ものびのびと息をしている。鼻につく磯臭さも、この寮のチャームポイントだ。
寮の長々とした廊下を歩いていた。他の寮と比べ寮生が少ないオクタヴィネル寮は、モストロ･ラウンジのこともあり、寮の中はいつもどことなく静かだった。そのおかげか、監督生たちも周りの目を気にすることなく寮内へ入ってこられた。
監督生は一週間以上ぶりのAとの会話を膨らませて、グリムたちはほとんど蚊帳の外だった。彼のAに対する過保護さにはこの場の全員が慣れていたが、こちらも久しぶりということで、その勢いにゲッソリしていた。特に「AちゃんAちゃん」とやかましかった。
「廊下長くね？マジで遠いんだけど」
『初めて入るからでしょ。ハーツラビュル寮の内装に比べたら余っ程まともだし』
Aがハーツラビュル寮の外観や内装を「病気でうなされている時に見る夢」と形容すると、デュースは困ったように笑って「分からなくもない」と言った。健常な他寮の寮生が入ったら気が狂うのではないだろうか。
お互いを貶したり蹴りあったりしているうちに、Aの部屋の前へついた。女性ひとりということもあり他の学生たちとは少し離れた場所に設けられたそこは、角部屋ということもあり周りより少し薄暗かった。
「へぇ、端の部屋なんだ〜」
『ええ、あれこれ配慮してくれて』
ただでさえ一年生で一人部屋という贅沢をしているのに。
Aは控えめな金色のドアノブに手をかけると、違和を感じ取った。このままこの部屋に入って良いのかと、不安を煽った。エースが後ろから「入んねーの？」と聞くが、返事はなかった。
『……ここ、本当に私の部屋なの？』
Aの発言に一同目を丸くした。デュースは「まだ寝ぼけているのか？」と言うが、地理上はここがAの部屋の座標である。不気味に思ったAは、冷たいドアノブから一度サッと手を引いた。
『……誰か、これ持ってて』
「うわっ、こらA……って、」
Aは自分が手に持っていた荷物を後ろにいた人間に適当に押し付けた。Aが勢いよく扉を開くと、全員が目を疑った。散乱するベッド、硝子の破片が乗った机。生臭い匂いがAの鼻腔を支配した。
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天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
