オクタヴィネル寮じゃなきゃ ページ12
･
「つうか、監督生なんも関係ねーだろ。お前そんなこと考えてたのかよ」
サイテーだな、と尖った唇の先から発される。その通りだとしか言えない。結局自分も相当、時代錯誤で頭の固い谷の思想に毒されている。
まっすぐにエースと向き合っているのが恥ずかしくなった。自分は監督生のことをそういうふうに見ていたということを告白した今、どんな面下げて彼の顔を見たらいいのか分からない。
「あのさあ、あの人らがオーバーブロットしたのに監督生は一切関係ねぇし、お前もなんも関係ないんだわ」
責め立てるような口調でそう言うが、言葉の節々から彼の優しさや気遣いが垣間見える。Aは少ししょぼんとして、「ごめん」と謝った。それに対してエースは「自分が何に謝ってんのか分かってんの？」と鋭い指摘をした。相変わらず他人には厳しいのだ。
Aはまた何も言い返せなくなった。エースはそれを見てバツが悪いように後頭部を掻き、ため息をついて手を叩いた。
「はいもうネガティブ思考やめやめ！先輩らの接近禁止も今日までっしょ？会って話せばいいじゃん」
照れ隠しだろうか、彼はそっぽを向いてしまった。Aが「そうだね」と返事をすると、タイミングを見計らったかのように始業の鐘が鳴り響いた。そうだ、もう今日には寮に戻れるのだ。
アズールたちに久しぶりに会えることに、Aは喜びの反面、緊張している節もあった。オーバーブロットしてしまったアズールや、たくさん迷惑をかけたであろうジェイドやフロイドたちに、どんな顔をして会えばいいのか分からない。
もう既に気持ちが先走っているAは、あることに気がついた。小声でエースに耳打ちする。
『ねぇ、今日の放課後荷物を部屋に戻すの手伝って欲しいんだけど』
教科書で口元を隠してそう言ったAに、エースは億劫そうに顔を苦々しく歪めた。「オクタヴィネル寮じゃなきゃ助けなかった」と言う彼に、「借りは返すから」と渋々約束を取り付けた。Aはそこでふと、ユーゴに作った借りを返さなければならないことに気がついた。初めて山椒を生で食べた時のような気持ちの悪さを思い出した。
オーバーブロット騒動前に彼にモストロ･ラウンジを任せたときの借り、あれはどうとでもできる。しかし、アトランティカ記念博物館へ行ったときに彼が多くの手回しをしてもらった借りは、彼から契約を指定されている。
アズールの弱点って、何を言えばいいの……？Aは更に頭を抱えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
