それともデコピンか ページ11
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『……聞きたいんだけど、』
エースはどう思う？Aは自分の心情を確かめたく、彼に訊ねようとした。Aの胸につっかえている錨のようなわだかまりの真意を。
『オーバーブロットしたって聞いて、いてもたってもいられなくて会いに行ったのに、何だか私が隣にいた時よりも清々しそうにしてた』
「アズール先輩の話？」
エースがいつから彼のことを敬称を付けて呼ぶようになったのかの謎がAの脳裏を過ったが、ぶんぶん頭を振って話題に戻った。
「別に、今まで溜まってたものがオーバーブロットで全部吐き出せたからじゃね？解決したことに何をそんな悩んでんの？」
『解決した、のかな……』
それが本当に解決したのであれば良いが。「私が邪魔だったのかも」、Aは言った。私が、寮長の足を引っ張っていたのかもしれない。ぽつりぽつりと口から零れる言葉は、まるで独白でもしているかのように虚ろだった。
『……最低な話。私の中ではずっと、監督生が関わる人がオーバーブロットしてるっていう認識だった。魂の形がない、異質な彼の存在が全ての原因なんだって』
でも、もしかしたら……。Aはそこまで言ってまた口を閉ざした。この先を言葉にしてしまったら、それが本当になってしまうのではないか。しかし、ギュッと拳を握った後、意を決して口にした。
『もしかしたら、あたしの周りにいる人が”また”不幸になってる……？』
寧ろ、オーバーブロットした学生たちが命を落とさずいられたのは、彼の存在のおかげなのかもしれない。彼の言葉の力で、オーバーブロット後の学生たちは救われているのかもしれない。全ては初めから逆だったのかもしれない。
ひとつを口にすると、次から次へと他の可能性が浮上する。監督生の存在が生徒たちを救っているとするならば、自分は一体何をしていたのか。
一つ目の事件、リドルの場合はその現場に居合わすことは出来なかった。二つ目の事件、レオナの場合は、目の前にいたのにオーバーブロットを阻止することが出来なかった。そして今回、アズールの場合は論外。現場を知るどころか、意識すらなかった。
Aは昔傷つけた茨の谷の民たちと彼らを重ねた。生きる災害、呪われた子、どう考えたって不幸を呼び寄せるのは自分の専売特許だった。Aは俯いて記憶を巡らせていた。
「まさか、自分が悪いとか思ってるわけ？」
突然額に痛みが走った。サッと目が冴えたのは、彼の言葉のおかげか、それともデコピンか。
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天(そら)(プロフ) - ｍさん» コメントありがとうございます。この作品は自分の夢と妄想でできた自分のための夢小説なので、自分以外の誰かから評価をいただけるのは本当に嬉しいです。自己満足の作品のため期待に添えるかわかりませんが、最後までどうぞ見届けてください。 (6月4日 22時) (
レス) id: 6c60cd58bf (このIDを非表示/違反報告)
ｍ(プロフ) - コメント失礼します。作品の中に惹き込まれ、いつの間にか一日中読んでいました。こんなにも綺麗で面白いお話に出会え、心から嬉しいなと思います。これからの展開や夢主の心境の変化等、ワクワクすることでいっぱいです。これからも心から応援しております。 (6月4日 15時) (レス) @page19 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時：2023年5月14日 15時
