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小鳥のさえずりが、かすかに聞こえた。
ゆっくりと瞼を持ち上げて、重い体をベッドから起こした。
カーテンを開けると、光の束が部屋に降り注いだ。
「眩しっ……」
慌ててカーテンを閉めて、壁掛け時計に目をやった。
十一時半から朝ごはんを作る気力もなく、ろくに着替えもせずにベットに逆戻りした。
布団の上に寝転がって、枕元のスマホを手に取った。
LINEやTwitterの通知を横にスワイプして、適当に消していった。
どうでもいいものばかりだからと調子に乗って画面もほぼ見ずに消していると、最近見たアイコンが視界の端をよぎった。
タップしてトーク画面を開くと、未読のメッセージが届いていた。
「かるた会午後四時からやってます。いつもの建物が工事中らしいので、当分別のところでやるらしいです。四時に現地集合でお願いします」
昨日の夜に送信されたものだったけど、珍しく早く寝たから今まで気づかなかった。
一緒に送られてきたGoogleマップのスクショを開いて、場所だけざっと確認した。
周りの建物からすると、すごく見覚えのある場所だった。
——手話教室の場所？
手話教室のサイトを開いて、そこに乗っている地図を確かめてみた。
全く同じ建物を示していたけど手話教室は一階、かるた会は二階だった。
階段を降りたらすぐだということに気づいて、遅刻の可能性がだいぶ減ったことに一安心した。
満足してLINEを閉じてから、まだ覚醒していない頭でカップ麺を取り出した。
カップラーメンだけの質素な昼ごはんを終えてからすぐに、昼寝をした。
食べた直後に横になるのは健康によくないことぐらい、分かっていた。
でも、襲ってくる睡魔には勝てなかった。
かるたの暗記時間中に寝るわけにもいかないだろうし。
アラームもかけずに寝たけど、かろうじて待ち合わせに間に合いそうな時間に起きることはできた。
高校・大学と使っていたTシャツと長ズボンに着替えて、手首に巻いた髪ゴムで適当にお団子を作った。
部活の時と全く同じ格好になると、気持ちまであの頃に戻ったような気がした。
今はもう、あの頃みたいに上手にはできないけど。
必要最低限の荷物だけ持って、毎週来ている建物に行った。
田畑くんはもう着いていて、いつもの如くスマホを触っていた。
「遅くなってごめん」
「四時一分前です」
「田畑くんはいつ来たの？」
「十五分前とかですかね」
「早っ」
「Aさんはいつも、ギリギリですもんね」
笑いながら余裕そうな感じで言った田畑くんに、何も反論できなかった。
久々のイグサの匂いが、ものすごく懐かしかった。
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