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その五分後、私たちは長蛇の列に並んでいた。
たっぷり十五分ぐらいは待っただろうか。
ようやく中に案内された。
暗闇に飲み込まれそうだけど、佐倉くんの隣なら大丈夫。
そう言い聞かせて、佐倉くんの後に続いて室内に入った。
いかにも不気味なBGMが流れる中、順路に従って懐中電灯一本だけをお供に進んでいった。
バサッという音がして、いきなり真っ白な布のようなものが目の前に出現した。
それが、どんどん私の方へと近づいてきた。
どこかから、冷え切った風が吹いてくるのを感じた。
とにかく怖くて、思わず後ずさりした。
次の瞬間布みたいなものを踏んで、盛大に転んだ。
叫び声を上げそうになったけれど、佐倉くんがいる手前、それだけは全力で我慢した。
真横に私がいないことに気づいた佐倉くんが、「大丈夫!?」と慌てて手を差し伸べてくれた。
お化けの方も布を引っ張られて驚いたのか、すぐに引っ込んでしまった。
「行こう」
「うん」
「何かあったら守るから」
「ありがとう」
表情は見えなかったけれど佐倉くんの言葉が本当に力強くて、私は自分の全てを佐倉くんに預けることに決めた。
最初は怖かったものの、佐倉くんと手をつないでいれば、恐怖心さえ好奇心に変わっていくようだった。
少しだけ気持ちが楽になって、周りを見回す余裕ができた。
教室は真っ暗で何も見えないし、佐倉くんがいなかったら私はずっと発狂してただろうけれど。
火の玉を交わしてゾンビから逃げるのでさえ、最後の方は楽しかった。
もちろん恐怖も少しはあったけれど、それよりも楽しさが勝っていた。
やっと光の世界へ戻った時、私は佐倉くんと目を合わせて笑った。
手をつないだまま廊下を歩いていると、「やっほー！」と手を振る紬が視界に入った。
手を振り返そうとして、佐倉くんとつないでいる右手が目に入った。
佐倉くんがそれに気づいて「離そうか？」と言いたげな表情をしたけれど、私はその上から手を強く握りしめた。
そして、左手で手を振り返した。
「ここ何で分かったの？」
「受付の子に聞いた」
「なるほど」
紬は、ほんとに友達多いんだな。
「あっ、今来て大丈夫だった？」
「うん」
あの後教室に戻って何気ない会話をして時間を潰していた時も、佐倉くんとお化け屋敷に行った時も、全部アルバムにしまいたいぐらい最高のものだった。
私の真横で紬と佐倉くんが笑っているこの時間は、永遠に終わらないように感じられた。
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