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夏が過ぎ、秋が終わり、冬が去って、春が来た。
今日で、この制服に袖を通すのも最後になる。
感傷に浸りながら、ブレザーのボタンを止めた。
ドアを開けると、まだまだ肌寒さを感じる風が、ハーフアップにした髪の毛をふんわりとなびかせた。
どこからか、白い花びらが気流に乗ってやってきた。
桜にしては早いなと思って辺りを見回すと、向かいの家の白梅が満開だった。
桜のような華やかさはなくとも、凛として居住まいを正している樹木が私の心を浄化してくれた。
その厳かな佇まいは、卒業式にとてもふさわしく見えた。
無駄に長い卒業式を終えた後は、紬と一緒に遊園地へ向かった。
人生で初めてスカートを短く折って、紬と笑い合った。
卒業式で静かにしていた反動か、おしゃべりが止まらなかった。
これで高校生活が本当に終わってしまうのかと思うと切なくて、今じゃなくてもいいけど話したいことを全部紬に話してしまいたいような気持ちになった。
遊園地を楽しんでいると、自分の真横に紬だけでなく佐倉くんもいるような錯覚を感じた。
そんなわけはないのに、振り向いたら佐倉くんがいて「A」と私の名前を呼んでくれるような気がした。
この三人で遊びに行きたかったな。
今更遅いけれど、またいつか佐倉くんや紬と再会できる時が訪れたとしたら、どこでもいいから一緒に行きたい。
そして、同じ時間を共有したい。
帰る時間を決めていなくて焦ったけれど「夜景みたいよね」という二人の意見が一致して、高校も卒業したし別にいいだろう、という勝手な判断で閉園間際までいることにした。
昨日買ったばかりのスマホを片手に、紬とたくさん写真を撮った。
あっという間に埋まっていくデータフォルダさえ、愛おしかった。
あっという間に夜になって、私たちは最後に観覧車に乗ることにした。
夕方の観覧車しか知らなかった私は、夜の観覧車に乗る人が意外と多いことにびっくりした。
紬と向かい合って乗り込んだ車体が、ゆっくりゆっくり上昇していった。
観覧車から見る夜景は、星を地上に集めたような壮大な光景だった。
一番上まで来た時、首を一回転させて自分の見えるもの全てを目に焼き付けた。
地球上にあるもの全部が、私の目に飛び込んできた。
家に帰ってデータフォルダの写真を見た時、佐倉くんの写真が一枚もないことが無性に寂しかった。
アルバムに挟んであった佐倉くんのメモを、改めて見返した。
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