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結局この日演劇が終わってから、紬に会うことはなかった。
その夜インスタで、紬から長文のDMが送られてきた。
「当日券買いに行ったら先輩たちに頼まれて、店番やってた。色々ハプニング起きて人が足りなくなっちゃったんだって。私はAと回りたかったしそのつもりだったけど断れなくて、ごめん。チケット全然使えてなくて明日それ全部使うばっかりになっちゃうから、行きたい教室展示あったら行ってくれていいよ。その後で合流したいなって思ってる。今日は勝手なことしちゃってごめん」
佐倉くんにLINEするはずだったのにわざわざ私に直接連絡してきてくれたところが、紬のいいところだと思った。
私はもちろんそんなことで全然怒っていないし、大きな声では言えないけど、結果佐倉くんと一緒にいられて幸せだった。
紬を探すのに苦労したことも、忘れるぐらいだった。
「いいよ。別に紬が謝ることじゃないよ。先輩から頼まれるなんて、すごいことだよね。チケットは佐倉くんにあげたから大丈夫。明日会おうね」
いつもより長めの、でも紬と比べたら短めの文章で返信した。
すぐにいいねがついたのを見てから私はインスタを閉じて、その代わりにYouTubeを開いた。
今日佐倉くんと聴いたSnow Manの曲を思い出して、再生リストを作った。
Secret Touchから始まって、君の彼氏になりたい。、EVERYTHING IS EVERYTHING……。
最後は確か、360mだった。
「文化祭」と名付けた再生リストを流しながら、晩ごはんを食べた。
文化祭でワッフルを食べたのに、Snow Manと佐倉くん効果か、晩ごはんも全部完食できた。
文化祭二日目、紬が食券の消費に奔走している間、私は教室でぼんやりとパンフレットを眺めていた。
「何か行きたい？」
不意打ちの佐倉くんに、椅子から落ちそうになった。
後ろから私が広げているパンフレットを眺めてくるから、佐倉くんの顔が目の前まで迫ってきた。
「紬が、何か行きたいのあったら行ってていいよって言ったんだけど、どうしようかなって」
「青羽、今日もどっか行ってるのか？」
「昨日使えなかった食券使ってる。その間暇だから……どっか行かない？佐倉くんが暇ならだけど」
「どっか行く？」
最後の方が聞こえていなかったみたいだ。
緊張と恥ずかしさとで早口になってしまったからかもしれない。
「うん。佐倉くんの行きたい場所でいいよ」
「じゃあ、ここで」
「分かった」
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