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夏祭りの最終日だからか、会場は特にたくさんの人でごった返していた。
私たちは当たり前のように手をつないで、人の間を潜り抜けた。
所狭しと並ぶ屋台に、大量の人が群がっている。
今日は晩ごはんも食べていないから、紬と来た時よりもたくさん食べられるだろう。
そう考えたらさらに、楽しみになってきた。
青葉の茂る桜の木々の間に渡された紐に吊るされている無数の提灯が、盛況に一層華を添えていた。
他愛もない話をしながら歩く二人きりの時間は、いつものことだけど特別だった。
同じ時間は、二度と訪れない。
それを、佐倉くんが体現してくれていた。
「屋台多いね」
「お腹空いたし、何か食べるか」
「お互い好きなもの、一個ずつ選ぼうよ」
「そうだな」
佐倉くんは焼きそば、私は唐揚げを選んで二人で買った。
お会計の時に私が財布を出そうとすると、「いい」と佐倉くんに制止された。
「いつも自分の分は払ってるよ？」
「最後だから」
佐倉くんが私の分まで払ってくれて、人気の少ないところまで移動した。
「最後って？」
「……最後だから。こうやって、二人で会うの。夏休み中に」
「確かにそうだけど」
私は明日から実家へ帰省するし、私が帰ってくるのとほぼ入れ替わるように佐倉くんも行く場所があるらしいから、学校が始まるまでは佐倉くんに会えない。
「でも、学校始まったら会えるよね」
「……だな」
雲を掴むような実体のない返事をされたけれどその後にそっと小指を絡められたから、そんな考えはすっ飛んでしまった。
「……ねえ、食べられないじゃん」
「俺は食べれる」
「佐倉くんは左手でやってるからじゃん。私、右手なんだけど」
「そっか、ほんとだ」
「天然だよね、佐倉くん」
「ぬかるんだ道でこけた挙句に弁当食べにきたのに食べずに帰ろうとしたAよりはマシだろうよ」
「それは……」
思いがけず黒歴史を掘り起こされて、顔が熱くなった。
「でも、あれがなかったら今のこの時間もないってことだよね」
「まあ、そういうことだな」
運命って、本当にあるんだなって思った。
佐倉くんとの出会いから今に至るまでは全て、運命でできている。
決して交わることのなかった二人の人生が、神様のいたずらか何かで交差して、そのまますれ違わずに絡み合った結果だ。
つないだ小指から、偶然とか必然とかそういうものも全部超えた運命を、確かに感じた。
これを、恋と呼ぶのかもしれない。
好きな人の隣で食べるソースの濃い焼きそばとジューシーな唐揚げは、今まで食べたどんな料理よりもおいしかった。
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