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「ねえちょっと待って、どういうこと？夏祭りって、そういうこと？」
パニックになっている私の目の前でさらにパニックになっているのは、感じ的に佐倉くんのお姉さんだろうか。
「紬ちゃんとは別れたってこと？想どこ？」
「部活帰ってきて、シャワー浴びてる」
「そっか……。横いい？」
お茶の入ったコップ片手に、お姉さんが私の隣に座った。
「紬ちゃんもかわいかったけど、新しい彼女さんもかわいいじゃん。想、よくこんなかわいい子捕まえてこれるよね」
「いえ、そんな……」
「想の、どこが好き？」
声のトーンを落として、聞かれた。
「え……」
改めて聞かれると、返答に困った。
好きなところを具体的に言葉にするのって、難しい。
「華、あんまり困らせないの」
「はあい」
ガチャっと再び、ドアが開く音がした。
パッと目の前を見ると、佐倉くんと目が合った。
「えっ、何で」
「あっ、ごめん」
「ていうか何でお姉ちゃんいるんだよ」
「さっき帰ってきたの。そしたら、想の彼女いた」
「外で待ってたの暑そうだったから、中に入ってもらった」
軽くお辞儀して、感謝した。
「来るの、思ってたより早いな。着替えるから、もうちょっと待ってて」
「あっ、逃げた。想！」
慌てて階段を駆け上げる足音だけを残して、呼び止める声を無視した佐倉くんが去っていった。
「想、すごい好きじゃん」と、お姉さんがつぶやいた。
それにしても佐倉くんは、いつ見てもカッコいい。
さっきはシャワー後だからか、白いタオルを肩にかけて緩めのTシャツを身につけていた。
まだ乾かしていない髪の毛から滴った水滴さえ、宝石みたいだった。
「ただいまー」
まだ誰か来たのかと、ソファの上で身構えた。
お姉さんと次は、妹さんとお父さんだった。
「頼まれたやつ、全部買ってきた」
「ありがとう」
「あっ、初めまして……」
お互い、軽く会釈した。
「お姉ちゃん、どういうこと？」
「想の、彼女さん」
「えっ……」
その子が「お兄ちゃーん！」と言いながら二階へ上がっていくのが見えた。
「ちゃんと説明してもらうから」とその子に手を引かれた佐倉くんが、気の進まない顔で李文具に入ってきた。
「何でみんないるんだよ」
「今からこの子と夏祭り行くの？」
「うん」
「そうなんだ。やっぱりそうなんだ」
「何だよ急に」
「へえー。ま、楽しんできて」
「とにかく出るぞ」
「あ、うん。ジュースありがとうございました」
佐倉くんの家族全員からの興味津々な視線にさらされながら、佐倉くんん医引っ張られるような感じで家を出た。
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