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それから佐倉くんはたまに、保健室にいることがあった。
でもすぐに回復するみたいで、いなくなった次の授業には再び出席している。
それ以外は特に何もないみたいだから、恐らく病院には行っていない。
それでも心配だから、私はなるべく近くで佐倉くんを見守ることにした。
見守るといってもただいつも通り隣にいるだけだけど、いつもよりほんの少しだけ距離を詰めてみた。
お弁当を食べる時や一緒に帰る時、今まであった微妙な空間をなくすように、佐倉くんと私の体がくっつきそうなぐらいまで寄った。
佐倉くんはそれに気づいているのかどうかは分からないけれど、心なしか以前より私の手を握ってくれたり進んで隣に来てくれる回数も増えた気がした。
それが舞いあがりそうなほどうれしくて、次第に佐倉くんを見守るという本来の目的を忘れて、目の前の佐倉くんのことしか視界に入らなくなっていた。
それだけ佐倉くんに魅力があると言ってしまえば聞こえはいいけれど、自分との約束を進んで破ってしまっていた。
今はまだそんなこと、思いもしなかったけれど。
とにかく私は、残りの高校生活を謳歌することに全力を尽くしていた。
今までの学生生活で作れなかった分の思い出を全部、高校の三年間で作ろうとしていた。
普通みんなが小中高の十二年間かけて作るものをたった三年間、つまり四分の一の時間の中に詰め込むことにした。
毎日がお正月で、クリスマスで、特別な日で、見えるもの全てが輝いていた。
プレゼントボックスを次々に開けて、輝く宝石を取り出しているみたいだった。
ルビー、ダイヤモンド、エメラルド、アイオライト——。
どれを開けても、まばゆい光を放つ宝石たちが入っている。
それがもはや、当たり前になっていた。
未来なんて、誰も予測できない。
そんな当然のことでさえ、意識の片隅にも置かなくなった。
今はむしろ、その方がよかった。
未来を永遠に続くものだと錯覚して、勝手に将来のことを考えてみたり、無用な心配をしてみたり。
先のことに対する不安はもちろんあったけれど、なぜか自分は大丈夫だという安心感があった。
そんな根拠のなかった自信は、思えば油断の裏返しだったのかもしれないけれど。
あの時不確かな未来を信じられたのは、佐倉くんがそばにいたから。
ただ、それだけの理由だった。
梅雨時の灰色の空に、白い光がくっきりと差し込んでいた。
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