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夢のようだった桜とサクラソウの見頃が終わって、中間テストという地獄の一週間が着々と迫ってきていた。
テスト発表がされた日、予想よりも多いテスト範囲に絶望しながらも私は佐倉くんとカフェに行くために電車に乗った。
カフェに行ってから図書館で勉強する、というのが私と佐倉くんのテスト前の放課後ルーティーンだった。
カフェのメニューはどれもお手頃な価格で頻繁に訪れやすいのもあって、私たちは常連客のごとく店に足を運んでいた。
電車を降りて道を歩いていると、後ろからトントンッと肩を叩かれた気がした。
怪訝に思って振り向くと、私の真後ろに若い女の人が立っていた。
その女の人は、私にスマホの画面を向けて見せた。
「道を教えてほしいです」と書かれているのが見えたけれど、突然のことでしかも初対面の人とどう接すればいいのか分からなかった私は、そのままフリーズしてしまった。
横目で佐倉くんを見て、助けを求めた。
佐倉くんは何かを答える代わりに、ゆっくり腕と指を動かし始めた。
その途端、今まで不安そうなオーラを出していた彼女の表情が、パッと明るくなった。
その人はスマホを片付けて、佐倉くんと同じように腕と指を滑らかに動かしていた。
佐倉くんがうなずいた後、私に「行くぞ」と小声で言った。
「う、うん」と、歩き出した佐倉くんに私もついていった。
「どこ行くの？いつもの道だよね？」
「目的地、一緒だった」
「そうなんだ」
カフェについた女の人はレジの前でしゃがみ込み、ケーキなどが並ぶショーケースを眺め出した。
佐倉くんも、その横に立っていた。
立ち上がったその人が、佐倉くんの前で手をひらひらさせてからさっきと同じように腕と指で何かを伝達していた。
それを見た佐倉くんが店員さんに声をかけて、「プリン二つ」と注文を伝えた。
お金を払って無事にプリンの入った白い箱を受け取った彼女は、私たちに向かって手刀を着るような動作をしてから笑顔で店を去った。
手刀って確か、お相撲さんが懸賞金を受け取るときにする動作のことだったはず。
ということは、あの人は私たちに感謝してるってこと……？
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