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やっと、終わりが見えてきた。
最後のグラウンドに入ると、ゴール付近で紬と佐倉くんが立っているのがかすかに見えた。
いきおいよく手を振っている紬と、遠慮がちに小さく手を振っている佐倉くん。
前までの孤独な自分だったらさっさとリタイアしていたけど、今は紬と佐倉くんがいる。
私を支えてくれている二人が、待ってくれている。
だから私は、変わりたい。
どこをどう走ったのかも分からないまま、ゴールに飛び込んだ。
順位カードをもらったまま記録もしてもらわずに突っ立っていると、こちらに駆け寄ってくる足音が聞こえた。
「お疲れ！」
「お疲れ」
紬と佐倉くんだった。
お礼を言うのがやっとだったけれど、二人とも私の伝えたいことを全て汲み取ったような表情をしていた。
ようやく呼吸が落ち着いて三人で軽くおしゃべりしていると、表彰式が行われるから一位から十位まではテント前まで来るように、というアナウンスが入った。
「そろそろ行かなきゃ」
「俺も」
「いってらっしゃい」
今日の空みたいに透き通った爽やかな笑顔の二人を、私も同じような表情で見送った。
まだみんながざわざわしている中、表彰式が始まった。
見るからにスポーツ万能そうな女子が十人、一列に並んだ。
右から四番目が、紬だった。
少し乱れたポニーテールが、軽やかに揺れていた。
それさえも、春の陽光の前に白く輝いていた。
私からはあまりにもかけ離れた世界が、目の前に広がっていた。
半ば放心しているうちに女子の表彰式は終わって、入れ替わるように男子が並んだ。
佐倉くんは、一番左にいた。
身長が高くてスラっとしたモデルさんみたいな体形の佐倉くんは、どこにいてもひときわ目を引くものがあった。
「優勝 佐倉想」と読み上げられた。
あのまま、本当に一位になったんだ。
表彰式の手前、全力で喜ぶことはできなくても顔を見ただけでうれしそうにしているのが伝わってきた。
そのまま閉会式を終えた後、表彰式からずっと前で待機していた二人と合流した。
「二人ともおめでとう」
「ありがとう」
「ありがと！私もトロフィーほしかったな」
よく見ると佐倉くんは、賞状を持っていない方の手でトロフィーを携えていた。
「三位以内、頑張ったらいけるだろ。青羽なら」
「普段全然運動しないから、六位でも結構しんどかったんだけど」
「俺は余裕」
「毎日運動してる人と一緒にしないで」
「最下位の前でその会話する？」
「ごめんごめん」
競技中は深い海の底へと落ちていくような感覚でしんどかったけど、その後がこんなに楽しいなんて思わなかった。
近くにあった桜の木の蕾が、膨らんできていた。
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