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高校最初の一年が、終わろうとしていた。
そんな中、数ある学校行事の中でも私が断トツ参加したくないものがやってきた。
マラソン大会だ。
本当は一か月前にやる予定だったけれど、その日は大雪で中止になってしまった。
会場確保の問題もあって、結局一か月後まで引き延ばされた形だ。
このままなくなってしまうことを期待していた私は、朝から沈鬱な気分でいつもとは真反対の電車に乗った。
「マラソン大会嫌だな……」
「マラソン嫌い？」
「うん。何か終わりが見えないんだよね。紬は全部得意だよね」
「まあね。中学校は硬式テニス部だったから、外周走ってたし」
「外周って結構距離あるイメージだけど、そこ走ってたの？」
「うん。そのおかげで、マラソン大会はずっと上位キープできてた」
「すご！とにかく完走すること目標にしようかな」
「それでいいと思う」
実は私は、マラソン大会と名の付く行事に参加するのは初めてだ。
でも体育の授業の感触から、マラソンは私の特に苦手な競技トップスリーにランクインするレベルだということは簡単に想像がついた。
授業ではほぼ最下位を走っているし、常に先頭集団にいる紬には何回抜かされているか分からないぐらいだ。
たぶん、二十分で二キロも走っていない。
それが、今日は何分走ったとしても五キロ走り切らないと、ゴールできない。
まだスタートまで十分ぐらいあるのに、みんなぞろぞろとスタートラインへ向かっていった。
どうせ抜かされるのは分かっているし紬についていくなんてもってのほかだから、そそくさと最後尾に陣取った。
十五分後にスタートして、しかも自分たちより二キロも多く走る男子にさえ抜かされる未来が見えた。
「スタートまであと五分」というカウントダウンに、ドキッとした。
おしゃべりの渦に飲み込まれそうになりながらも、私は一人でスタートのピストル音を待った。
「用意、スタート」の合図とともに、大量の女子が一斉に走り始めた。
私はいつもと変わらず、ウォーキングに毛の生えたような速度で足を前へと進めていった。
グラウンドを一周しただけで既に苦しくなってきて、今すぐにでも歩きたくなった。
既にどれだけの距離走っているのかも分からなければ、どれぐらいの順位なのかも見当がつかなかった。
曲がりくねったコースでゴールも見えない中、だんだん私の周りにも人がいなくなってきた。
反対側の道を、先生の自転車に先導された先頭集団が折り返してくるのが見えた。
その中に見える、ふわふわ揺れているポニーテールと全くブレていないフォーム。
私の方をちらっと見て微笑んでくれたけれど、何も返す気力がなかった。
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