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残りは冷ましてから佐倉くん用に一個だけラッピングして、さらに余った分は私と紬で半分ずつ持ち帰ることにした。
きれいにラッピングするコツも、紬から教えてもらった。
ハート形のカードに「チョコありがとう。おいしかったよ」と書いてからカラータイに通して袋の口を閉じたら、完成。
「ほんとにありがとう」
「おいしくできてよかった」
完全下校時刻が迫っていたから、大慌てで後片付けを済ませた。
二人でやったから思ったよりも早く終わったものの、先生たちに追い立てられる格好で学校を出た。
「ちゃんと渡せるかな」
「大丈夫。根拠ないけど、Aならいけると思う」
「うん、頑張る」
「私だって緊張したけど、案外何とかなるよ」
「そうなの？」
「うん。私は、バレンタインに渡した」
「佐倉くん、どんな反応してた？」
「すごく喜んでくれてた。自分の作ったものを喜んでもらえるってこんなにうれしいことなんだなって思った。私の目の前ですぐに食べてて、『おいしい！』って言ってくれた」
本当にうれしそうに、紬が言った。
「佐倉くんからお返しとかもらったの？」
「あの後ぐらいから佐倉くん、塾にも来なくなったから会えなくて。最後にLINE来てからは、連絡も取れなくなった」
「何で？」
「分からない」
「だよね。ごめん」
こんな分かり切っていること、紬に聞いちゃダメだったのに。
「ううん。私が一方的に佐倉くんのこと好きで、私が佐倉くんを付き合わせてただけだったのかも」
「そんなことないよ。佐倉くん、紬のこと本気で好きだったと思う」
「何でそんなこと分かるの？」
「紬のこと話してる佐倉くん見てたら、何となくそんな気がして」
「そう？」
「うん。佐倉くんは、別れたくて別れたんじゃない気がする。何か事情があって、別れる以外の選択肢が見つからなかったから別れたんだと思う。あくまで私の想像だけど」
「佐倉くんに嫌われたわけじゃないんだったら、よかった」
紬も佐倉くんのこと、本気で好きだったんだろうな。
隣でうなずいている紬を見て、余計にそう思えた。
何なら今もお互い、相手のことが好きなのかもしれない。
逆はあり得るにしても、紬はダメで私ならいいなんてことはあるんだろうか。
でも、せっかくそんな紬にも協力してもらっているんだから、何としても渡さないと。
佐倉くんからもらったチョコの上にのっていたアラザンみたいな星が、今にもこぼれ落ちてきそうだった。
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