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色々ハプニングがありながらも、ついに迎えた文化祭当日。
劇の最終確認があるから、いつもよりも早めに家を出た。
色づき始めた街路樹に、季節の移り変わりと時の流れを感じ取った。
「A！」
背後から聞こえた声に振り返ると、いつもとは雰囲気の違う紬がいた。
「髪の毛、下ろしてるね」
「うん。ちょっとだけ後ろで編み込みみたいなのしてるけど」と、紬がくるっと私に頭を向けた。
「ほんとだ。自分でやったの？」
「お母さんにやってもらった」
「すごい！」
「Aもやろうか？」
「紬、できるの？」
「上手くできるか分からないよ？」と紬は言うけど、私よりは上手にできるに違いない。
「いいよ、全然」
「学校着いたらね」
「ありがとう」
劇のリハーサルを見ながら、私は紬に髪の毛をくくってもらった。
どうなっているかなんて全く見えなかったけれど、何かすごいことをされているんだろうな、ということだけは伝わってきた。
昨日佐倉くんと修理した背景の大道具が真っすぐ立っていることに、一安心した。
近くにいた佐倉くんと目が合うと、大道具の方を見てから大きくうなずいてくれた。
私も、うなずき返した。
紬が私の考えていることを見透かしたかのように、「昨日、あれから何とかなった？」と聞いてきた。
「うん。ちゃんと立つよ」
「色もきれいというか、鮮やかになってる。上からもう一回塗ってくれたの？」
「うん。私じゃなくて、佐倉くんが」
「そうなんだ。やってくれてありがとう。私、昨日帰っちゃったから」
「ううん。楽しかった」
「A、美術苦手なのに？」
「これは、何かまた別物って感じ」
「へえー」
紬が意味深な表情で私の顔をのぞき込もうとするのをよけようとして、体を少し捩った。
「あともうちょっとだから、動かないで」
「あっ、ごめん」
「できたかな。編み込み二つして、後ろでまとめただけだけど」
「えっ、すごい！ありがとう」
そっと後頭部を触ってみると、編み込みの形がはっきりと見えるような気がした。
見なくても、すごくきれいになっているのが分かった。
みんなに合わせて、体育館に移動した。
順番を決めるために少し前に引いたくじの結果、私たちのクラスはトップバッターになった。
そのせいもあってピリピリした空気をまとったまま、肌寒い体育館へと足を踏み入れた。
開会式はあっという間に終わって、すぐに私たちの演劇の番がやってきた。
私は舞台袖で見ているだけなのに、カーテンの隙間からたくさんの生徒や先生が見えただけで、心臓が飛び出そうだった。
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