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私と佐倉くんの関係は、少し謎だ。
昼休憩はあんなに話すのに、教室では席が隣同士のくせにお互い目も合わせない。
私もなるべく合わさないようにしているし、向こうもたぶんそうしているんだろうなとは感じる。
私の場合、目が合うと恥ずかしくなるからという理由だけど、佐倉くんの方はどうなんだろうか。
そんな感じだからもちろん、教室内では全く言葉を交わさない。
しかも休憩時間、ぼっちの私とは対照的に佐倉くんはたくさんの人に囲まれていて、何かあっても話しかけにいける雰囲気ではなかった。
そんなスクールカーストのトップと最下層という、生きる世界の違う私たちが交わることなんて絶対ないと思っていたのに。
昼休憩の時の佐倉くんは教室にいる時とは違って静かで、まるで私に引きずられているみたいだ。
どっちが本当の佐倉くんか、いまいちよく分からない。
「A、何でいつもここにいるの？」
「友達、いないから。春休み中に転校してきたばっかりだし」
「俺も」
「そうなんだ……。佐倉くんは、何でいつもここにいるの？」
「友達、いないから」
「何で？いつも休憩時間、みんなと一緒にいるのに？」
「あー、あれね。何か入学した時から俺の知らない人がたくさん寄ってきて、はっきり言うとウザい。今のところはとりあえず、適当にあしらってるけど」
心底面倒くさそうな表情で、そう返された。
顔が整いすぎているから、嫌でも目立ってしまうんだろうな。
顔がよかったら幸せなんだと思い込んでいたけれど、実際顔がいい人にだって悩みはあるみたいだ。
それでもやっぱり、私と真反対の悩みを抱えているのが、少し羨ましかった。
「同じ中学校の子とかいないの？」
「いない。ここに来たの、春休み中だから」
「そういうことなんだ」
「でも、一人だけ仲いい子がいる。戸川湊斗っていうんだけど、知ってる？」
「あー、何か名前だけ聞いたことあるような……。同じクラス？」
「うん。俺と同じサッカー部の子」
「佐倉くん、サッカー部なんだ。何か、分かる気がする」
「小学校の時からやってたから、惰性でそのまま入った。Aは？」
「私？」
「部活は？」
「……決めてない」
「あと2日で部活決めなきゃいけないだろ？」
「……うん。パッと見一番楽そうなところにしようと思ってる」
私の通う高崎南高校は、部活動の加入が絶対条件になっている。
そんなことも知らずに入学してしまった私は最近ずっと、部活をどうしようか悩んでいる。
一人で部活見学に行ったら、「あの子一緒に来てくれる友達いないんだ」って思われるのが怖いから、絶対に行けない。
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