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私と佐倉くんの中央委員としての最後の仕事は、文化祭だった。
それは、今年一番のビックイベントであり、私たちが初めて経験する未知の世界だった。
高一は演劇をすることが決まっているけれど、今まで小学校のお遊戯会的なものでしかやったことのないものをいきなり高校レベルに引き上げるのは難しい。
しかも、台本からクラスで制作しないといけない。
限られた予算をどう使って、どういうものに仕上げるか。
中央委員が中心になって決めないといけないけれど、私は相変わらず佐倉くんに進行を全部委ねてしまった。
台本は、クラスにいる唯一の演劇部の子に頼むことにした。
大道具や小道具、衣装や会計などの役割をざっと決めてから、台本の内容の案を出していった。
話し合いは進むものの大雑把な案ばかり出てきて、なかなか方針が定まらなかった。
でも何度か話し合いを重ねていくうちに、なんだかんだ言って少しずつ前に進んでいる感じはあった。
そういう苦労も含めて文化祭なんだな、と実感できた。
ある程度台本が定まったら、いよいよ道具などの作成が始まった。
本当は夏休み前にここまで進めておくのが理想だったけれど、初めての文化祭ということでどこのクラスも全然話が進まなくて、結局これが普通の進行具合になってしまっているという有様だ。
中央委員の役割は主に話し合いの中心になることだけど、それ以外の時は人手不足のところを手伝いにいくことになっていた。
どこに行けばいいんだろうかと思う間もなく、「A、大道具手伝ってくれない？」と紬に頼まれた。
「男子がみんな楽したいからって小道具行っちゃったんだけど、女子だけで大道具とか無理じゃない？」
「誰か呼んでくる？」
「暇そうな人いたら、連れてきてほしいな」
私は「分かった」と返事して、手持ち無沙汰で机に戻ろうとしている佐倉くんに声をかけた。
「佐倉くん、大道具手伝ってくれない？女子しかいないみたいで大変だって」
「いいけど」と即答した佐倉くんは、小道具のところにやたらとたくさんあったカッターや絵の具を適度にパクってから、廊下に向かった。
「何すればいい？」
「佐倉くん？」
「うん。これ、塗る？」
「あっ、塗る塗る。ここが赤で、ここが白」
「分かった」
「Aは、下書き一緒に書いて。私、画力皆無だから」
「私もだよ」
紬とワイワイ言いながら進めていく下書きは、美術嫌いの私でもすごく楽しいと思えた。
不格好なものしかできなくて佐倉くんに「いや、ここって……」と突っ込まれることもあったけれど、その時紬とケラケラ笑い合っている時間は、何物にも代えがたい大切なものだった。
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