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高校生は、中学生よりも賢い。
そんな至極当然のことを、実感したくもないようなところで感じる羽目になった。
高校生に表立って陰湿なことをする子は、いない。
すぐにバレてしまうことなんて、百も承知だから。
その代わり、絶対にバレないような方法を取る。
その点で言えば、中学生よりもたちが悪い。
証拠が残らない、または残させないように細心の注意を払っている。
そんなことに頭を使うぐらいなら勉強したらいいのにと思うが、詐欺師に高学歴の人が多いことを思い出して、陰鬱な気持ちになった。
次の日からも細々とした嫌がらせはあったものの、追いつめられるところまでは全然行かないような感じの日々が続いた。
毎日なくなる靴を同じ場所まで救出しに行って、たまになくなる他の物たちも同様にした。
それだけだった。
私は毎日紬と佐倉くん以外誰とも話すことはないから無視されていたとしても気づく術がなくて、特に何も不便なことはなかった。
二人の態度にもいつもと何ら変わったところはなかったし、いつの間にか今の状況が日常の一部と化していた。
それから少しして秋の風を感じるようになった頃、学校帰りの電車の中で紬が話しかけてきた。
「A、聞きたいことあるんだけどいい？」
その声が普段とは違って聞こえて、思わず身構えてしまった。
「何？」
「前に友達とLINEしてたらこんなこと言われたんだけど、心当たりある？」
「こういうのあんまり人に見せるものじゃないとは思うけど……」と言いながらも紬がトーク画面を開いて、私に見せてくれた。
「紬いつも一緒にいる子いるじゃん？なんであの子といるの？」
「私がいて楽しいから」
「紬だから言うけど、あの子とそんなに関わらない方がいいと思う」
「なんで？」
「紬は知らないんだ」
「何のこと？」
「それならいいけど、それだけ一応伝えないとだったから」
「詳しく教えて」
「私も知らない」
「知らないのにそんなこと言うの？」
やり取りはそこで、途切れていた。
既読はついているけれど、そこから返信はない。
「何かあった？」とすごく心配そうな目で見つめてくる紬の瞳を見つめていると、胸が押しつぶされそうになった。
「ううん。知らないし、分からない」
「ほんと？」
視線を逸らした私の顔を、紬がのぞき込んできた。
私はただ、小さくうなずくことしかできなかった。
数分経った後紬が、「辛くなったら頼って。頼りになれるか分からないけど」とだけ言った。
私は紬に見えないようにこっそり涙を拭ってから、「うん」と大きくうなずいた。
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