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食べ終わった後、「何か乗りたいものとかある？」と佐倉くんに聞かれた。
「全部新鮮すぎて、何かよく分からないなー。おすすめとかある？」
「じゃあ、ジェットコースター乗る？」
「あれ？」
「うん」
頭上高くを轟音を立てて過ぎていく乗り物を指さすと、佐倉くんが大きくうなずいた。
「怖くない？」
「俺は全然平気。楽しいよ」
「佐倉くんが言うなら、乗ってみようかな」
チケットと一緒にフリーパスも買ったから、乗り物の待ち時間は少なくて済んだ。
緊張しながら、四人乗りのジェットコースターの一番前の席に乗り込んだ。
シートベルトが上手く締められなくて悪戦苦闘していたら、スタッフさんが来る前に佐倉くんが私の手をギュッと掴んで、正しい差込口へと導いてくれた。
自然とお互いの距離が縮まって、ドキッとした。
ジリリリリ……とベルが鳴って、ゴトゴトと不気味な音を立てながら、ゆっくりとジェットコースターが進み出した。
街を一望できるぐらいの高さまで来たけれど、スピードは若干遅くなったものの、ジェットコースターはどんどん上昇を続けた。
「これ、どこまで上がるの？」
「もうそろそろだと思う。前の部分持ったら大丈夫だから」
余裕さの感じられる表情で、佐倉くんがそう答えた。
持ち手をギュッと握りしめた途端上昇が止まって、今度はそれまでとは比べ物にならない速度で急降下し始めた。
ほんの一瞬体が浮いた後、重力や大気圧が全て自分にのしかかってきたようだった。
深い海の底へと落ちていきそうだな、と感じた時、下降していたジェットコースターは再び天空へと向かっていった。
突き抜けるように青い空へ、私と佐倉くんは進んでいった。
何回上昇と下降を繰り返しただろうか。
スーっと、ジェットコースターが元の場所に停止した。
隣の佐倉くんはもう、手際よくベルトを外して降りていた。
半ば放心状態だった私も慌てて降りて、日陰にあるベンチへと移動した。
佐倉くんが、「これ」と私にカバンを差し出した。
「あっ、忘れてた。ごめん」
「降りる時に持ってなかったから、回収してきた」
「ありがとう」
自販機でジュースを買って、一気に飲んだ。
体全体に水分が染み渡っていくのを感じて、すごく爽快だった。
「どうだった？」
「ちょっと怖かったけど、佐倉くんいたから大丈夫だった」
「絶対関係ないだろ」
「そんなことないよ」
「そっか」と意味ありげに笑った佐倉くんの横顔が、夏の日差しに照らされて眩しく輝いた。
佐倉くんもすごく幸せそうで、私まで顔がほころんだ。
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