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「初会合、行かない？」
四苦八苦しながらカバンに教科書を押し込んでいる紬に、そう声をかけた。
「いいよ。行こ」
中学校は帰宅部だったから、初会合に参加するのは初めてだ。
入学式の自己紹介と同じような空気を感じて、変に緊張してしまう。
「あっ、紬ちゃん、入って入って」
私たちは、誰か分からない先輩に手招きされるがまま、教室に入った。
一番端の席に、二人並んで座った。
「私早く帰りたいし、始めるね」という声とともに、初会合が始まった。
「まずは、自己紹介。誰から？」
「そりゃあ、名前の順でしょ」
「私から？」
「早く早く。一年待たせちゃダメでしょ」
「は〜い」
前に立っているキャプテンらしき先輩が、話し始めた。
「三年A組の井草華です。よろしくお願いします」
華先輩は、スラっとしたモデルみたいな人だ。
仕草の一つ一つに、美しさと気品が感じられた。
「二年F組の横井真子です。よろしくお願いします」
確か前、緑のTシャツを着ていた先輩だ。
高いところで一つにまとめたお団子が、明るい印象を与えてくれた。
紬は教室で見た時と同じく、ハキハキと笑顔で自己紹介をしていた。
私は一番最後になってしまったけれど、いつも通り当たり障りのないことを言った。
ただ、紬に誘われてかるた部に入った、ということだけは追加で伝えた。
「練習はかるた部の部室で毎日やってるけど、休みたい時は全然休んでいいよ。ルールとかはやってたるうちに分かるから、まずは札100枚覚えるところからだね。紬ちゃん、色々教えてあげて」
「分かりました。私が誘ったので、責任持って教えます」
「紬ちゃんは頼もしいね。じゃあ、今日はもう解散で。畳の摩擦で膝の皮むけて痛いから、練習には長ズボン持ってきてね」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ帰るね。お疲れ様」
「お疲れ様です」
他の先輩たちもそれぞれ、荷物を持って教室から出ていった。
「私らも、帰ろっか」
「うん。色々ありがとう」
「ううん、色々あるのはこれからだよ。ルールとか細かいことはいっぱいあるけど、札覚えないことには始まらないからね」
100枚分の札を暗記しないといけない、と聞くだけですごく大変だという感じがした。
「そうだよね。でも私、百人一首なんてほとんど知らないよ？」
「私も最初は全然分からなかったよ。Aは私より賢いと思うから、一か月あればほとんど覚えられてそう」
「そうかな？」
「頑張ればできるよ。明日、部活来る？」
「うん」
「私も。一緒に行こ」
「いいよ」
眩しい光の中を、二人で一緒に歩いて帰った。
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