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「あの、青羽さんは何で私に声をかけたんですか？」
「あ〜、これ言っていいか分からないんだけど、佐倉くんに頼まれたから」
「佐倉くんに？」
「うん。『部活見学、Aと行ったらいいじゃん』的なこと言われたんだよね。友達はもう入る部活決めてて、私も決めてるんだけど一緒の子がいなくて。誰と行こうかなって思ってたところだったから、助かった」
「そう、なんですね……」
「佐倉くんのこと、知ってるの？」
「あ、いえ、全然。ただ、同じ委員会になったってことだけで。青羽さんは、どうなんですか？」
昼休憩のことなんて、到底言えない。
慌てて話を逸らした私を青羽さんがどう思っているのか、不安で仕方がない。
「私？別に友達ってわけじゃないんだけど、佐倉くんのことは高校に入学する前から知ってる。塾、一緒だったんだよね。私はバカすぎて、佐倉くんよりもレベル低めのクラスの授業取ってたけど」
友達、ってわけじゃないんだ。
でも、なんでだろう。
その言葉の裏に何かが隠されているような気がして、胸がザワザワした。
「着いたよ。しーっ」
中から音声が聞こえてきたと同時に、青羽さんが唇に指を当てた。
音が止んで、一瞬静かになった。
次の瞬間、音が聞こえるや否や、バン！という派手な音がした。
「こっちこっち」と言われるがままに、私は青羽さんについて行った。
一足先に上がった青羽さんが、「こんにちは〜、今いいですか〜？」と中に向かって聞いてくれた。
「あっ、紬ちゃん？いいよ〜、入って入って」
「ありがとうございます！」
とても親しそうに会話しているのを見て、少し気が引けた。
とにかく言われた通りに靴を脱いで、畳の上に足を踏み入れた。
「紬ちゃんの友達？」
「あ、はい……」
目の前にいた緑色のTシャツを着ている人が、私に話しかけてきた。
「競技かるたって、知ってる？」
「いえ……」
「簡単に言うと、短歌の上の句と下の句があって、上の句が読まれた時に下の句が書かれた札をできるだけ速く取りに行く競技。見てたら分かると思うから、そこに座ってね」
「はい」
そう言って置いてくれた座布団の上に、正座した。
「紬ちゃんやる？」
「えっ、いいんですか？」
「うん。私、もう帰らなきゃだし」
「ありがとうございます」
青羽さんが部屋の奥に行ってしまって、私一人だけがその場に残された。
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