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「部活どう？」
いつもの場所でいつものようにお弁当を広げていると、ふいに佐倉くんがそう聞いてきた。
「楽しいよ」
「結局何部入ったんだっけ？」
「競技かるた部。百人一首やってる」
「何かさ、こうやってパーンってやるやつ？」
戦隊モノの決めポーズみたいに右腕を上げる佐倉くんを見て、思わず笑みがこぼれた。
「うーん……まあ、似たようなことはするかもだけど」
「カッコよさそう」
佐倉くんだって、と言いたくなった気持ちを、グッと抑えた。
「佐倉くんはどう？」
「部活？普通にやってる。楽しいよ」
「ふーん。同じ部活の、戸川くん、だっけ？どんな子なの？」
「あー、湊斗ね。主成分、優しさって感じ」
「主成分、優しさ？」
「うん。湊斗は水とかタンパク質とかじゃなくて、優しさでできてる。イメージはぽわぽわ、かな」
「優しいんだ」
「とことん優しい。自分の大切な人のためなら、進んで自分が悪者になってくれる」
「佐倉くんと、全然イメージ違うね」
「それは俺が優しくないと？」
分かっているくせにそんなことを言うところも全然違う感じがするけど、そういうところも一緒にいて楽になれる理由の一つなんじゃないかと思った。
「違うって。佐倉くんはさ、何？もっとクールな感じがするな。キラキラしてる」
「ふーん」
「スクールカースト最上位層、って感じ」
「それに関しては、そう見えてるだけ。言うなら、勝手に持ち上げられてる、かな」
「佐倉くんとは価値観似てるから、うれしい」
「確かに価値観似てる人って、あんまり会えないよな」
「だよね」
佐倉くんも紬もそうだけど、私とは生きる世界が全く違っていそうなのに、二人とも気持ちを共有できる部分がたくさんある。
そんなことは今までで初めての経験だし、二人のおかげで毎日が本当に楽しい。
「佐倉くん、紬に私の部活のこと頼んでくれたんだよね」
「うん」
「紬から聞いたんだけど、二人とも塾一緒だったんだね」
「そうだよ」
「佐倉くんはその時から紬と仲良かったの？」
「仲良かったというか……。お互いのことは、認識してただけ。クラス違ったし、友達っていうわけでもなかったけど」
「紬も同じこと言ってた」
佐倉くんがちょっとうなずいて、スマホに目を落とした。
知り合った間もない私が佐倉くんや紬に「友達ではない」という言葉の意味を問うのは、はばかられる。
私は、人の言葉を素直に受け止めることができない。
周りの視線が気になって、広く深く全てのことを詳しく知らないと気が済まなかった。
今回だってそうだけど、なぜか今は、まだ知らなくていいかなと思えた。
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