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「アッハイ」
そうだ。医者として、彼のようなヒーローが一番許せなくて…でも、個人の感情としては、一番眩しい。
個人としては尊重したいが、私は医者だから。そんなわけにもいかない。
何度もOriensの出動を見守っていくうちに、佐伯くんは特にそういうヒーロー的気質が強いのだと理解した。彼が市民を助けることだけを考えて傷つくたびに、頭が沸騰するような心地がした。ふざけるなと思った。
でも、助けた人が無事であることを喜ぶ姿は眩しくて、得難い精神性だと思った。
気づけば、私は一個人として彼を尊敬するようになって、彼のことを目で追うようになった。
あまりにも真っ直ぐな、誰かを助けたいという想いと行動が、私にとって美しいものだったから。
「無事で良かった」
あまりにも嬉しそうに彼が笑うから、笑ってくたばっていった
ああ、こういうヒーローが一番“嫌い”で許せなくて、でもヒーロー像としては一番好ましい。
その背反が悍ましくて苦しくて。
とても最悪な状況で、私は彼への恋心を自覚した。
ああ、私は佐伯くんが好きだ
でも、彼の自分を軽んじるような行動は看過できない。
それを当然にはしない。してやらない。それを見て見ぬふりはしない。
“当たり前”なんかに壊させてなんてやらない。もう、ヒーローを見殺しにするのはうんざりだ。
そんな気持ちが膨らむたび、佐伯くんを前にすると頭が真っ白になった私の口が、勝手に彼への物言いを強くしていって、自己嫌悪も膨らんでいく。
そうだ。私が一番許せないのは、あの日
「自分を軽んじないで」
溢れたその言葉に、彼が目を見開いた。
ああ、今の私はひどい顔をしているだろう。涙でぐちゃぐちゃ。
彼には嫌われたくない、なんてのは我儘だろうか。
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――――――
――――
「あれ、A…テツのいる部屋で休んどるんじゃ…。って、泣いとる！？ど、どうしたん！？」
「緋八ぃ」
「あ、いたいた。やっと見つけたわ。泣くな泣くな」
「宇佐美…」
「もしかして、テツ起きたん？」
「んで、Aが思わずキレてこれ」
「あー…なるほどな？」
「佐伯くんに泣いてるの見られた…無理…」
「「(難儀だなぁ／やなぁ)」」
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
