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[healer]
『あの子が無事で良かった。…後は頼んだ、“ドクター”』
笑いながらヒーローとして逝く
『もう見てられない』
傷つき続けるヒーローに、心を痛めて辞めていった同僚達がいた。
『…今までありがとう、“ドクター”』
そう言って悲しそうに笑う、心と体を壊して辞めていったバカなヒーロー達がいた。
だから…私はヒーローも、ヒーローが傷つくことが当たり前だと思ってる周りも嫌いだ。当然だと慣れてしまえば体は治せても、心が壊れてしまうから。
医者もヒーローも耐えられない。傷つくのが当たり前だと思って、ヘラヘラ笑うヒーローも許せなかった。
だから、私は心身の痛みを許さない。故に“ヒーラー”を名乗った。
「よっ、ドクター？」
「…私は確かに医者。でも、“ドクター”と呼ぶべきではないと思うけど…特別な由来があるんでしょう？ヒーラーとでも呼びなさい、白狼」
私はあんたのドクターじゃないし、“ドクター”と呼ぶな…なんて、どこかの白狼と会話したこともあったけど。
痛みを許さない。傷つくことが当たり前だと思うことを許さない。
そんなことが信念になったあたりだと思う。主にOriensの治療を担当のすることになったのは。
顔合わせで、元気な奴らだなと思っていると、一人だけキョロキョロしている人がいた。それが佐伯イッテツくん。
曰く、人見知りらしかった。
私が担当になって最初の任務。
拠点の出入り口でOriensの帰りを待っていると、佐伯くんが子供と会話していた。
「うん、ここは安全だ。少年、家が近いんだったな。一人で家に帰れるかい？」
「ありがとう、ヒーロー！大丈夫！」
「気をつけるんだぞ〜」
よく見ると佐伯くんは、あちこち怪我をしていてボロボロだった。
…まだ新しい傷。帰る途中で子供を助ける為に怪我をしたのだろうか。あまりに“ヒーロー”らしい。
その姿に歯噛みした。
傷つくことが当然だとでも思っているのだろうか。
でも、その姿は酷く眩しかった。
「アッ…ヒーラー…さん、もしかして…僕達待ち…？」
「ええ。お疲れ様。ところでその傷は何？」
「え、えっと…巻き込まれた子供を守ってたら、敵の攻撃が…」
「へぇ？随分とお優しいのね？」
「どうも…」
「褒めてないわ」
「エッ」
「バカじゃないの？守る為なら、いくら傷ついてもいいと思ってる？」
「……」
「あなたみたいなヒーローが一番嫌い。さっさと手当するから、座って」
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
