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「…佐伯くん」
「ハイッ！？」
「どういうつもり？上からの報告にあったわよ。避難していない市民を見つけたからって、一人で戦闘し始めたって。今回の任務は、全員が集合してから戦闘って話だったわよね？何してるの？一人で戦って勝てる相手じゃないことくらいわかったはずよね？」
「でもっ、市民がいたら守るのは当然で」
「ふざけないで」
彼女の言葉に、俺は彼女を見た。
ヒーラーちゃんこと、Aちゃんは泣いていた。確かにポロポロと涙を流していた。
「市民を守るためなら、いくら傷ついてもいいとでも思ってる？そんな馬鹿げたこと、私の前で…医者の前で口にしないでよ。そんなのは自己犠牲よ、馬鹿げた自己犠牲。そんなものを私は許容しない。許してなんかやらない。これだからヒーローは嫌い。自分達は市民を守る為なら傷ついてもいいと思ってる。そんなわけないでしょ」
「…ヒーラーちゃん」
「自分を軽んじないで」
「Aちゃん、ちょーっとストップ〜」
「っ…私」
「一回落ち着こうね、気持ちはわかるから」
「くっ…ぅ〜！」
「おっと。泣いてんじゃんA。平気…なわけないか。っておい、どこ行くんだよ。…何？テツにキレた？」
「そうそう。流石に今回のは大怪我だったからね、我慢できなかったみたい」
「だろうな〜、俺行ってくるわ」
「よろしく〜。ところで、テツなんか食べる？食べれそう？」
「食べれる、けど」
さっきまでの出来事が飲み込めない。
彼女は泣いていた。俺を見て泣いていた。
あの言葉は…明らかに憤りで、でも僕を案じていた。
「えーと…もしかして、今までのお説教でも…心配してくれた？」
「心配してたよ〜、テツが市民を助けたいのはわかるけど、それでも無茶するのは嫌だって」
「…本当は嫌われてない？」
「ずっと僕ら言ってたはずだよ？あの子がテツを嫌ってるわけないって。医者としてテツのやり方は許せないけど、個人としてはテツのこと尊重したいって言ってる子だからね？」
「ｽｰｯ…もしかしなくてもやらかした？」
「うん。テツが拠点に運び込まれた時の顔、見せてあげたいくらい」
「あ〜っ、女の子泣かしたっ…最低だ…」
「本当にね〜、これに懲りたら無茶はしないこと！」
「はい…肝に銘じます…」
彼女のフォローに行ったリト君に心の中で感謝と謝罪をしながら、彼女への謝罪文を考えた。
女の子を泣かせるヒーローとか最悪だよ本当に！！
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
