Epilogue ページ49
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「佐伯くん、お疲れ様」
「あ、ヒーラーちゃん！お疲れ」
明るく笑う彼に、怪我らしい怪我は見当たらない。
何も知らない人が見れば、先ほどまで敵と戦っていたヒーローの姿だとは到底思わないだろう。
ナイフ片手に奮闘する彼は、ヒーローという呼称に相応しい…などと思うのは、私の贔屓目だろうか。
ここ最近の彼は、以前にも増してできる限り怪我しないように立ち回っていると思う。
…私への気遣い、ということなのだろう。我ながら情けない話で、やっぱりヒーローが傷つくのは嫌だ。笑って死んでいった、バカな
それを抜きにしても、私は彼らを友人だと思っているから。…医者が公私混同なんて、と思わなくもないが、それでも嫌なものは嫌で、あの8人は私が治療の後泣いてしまう理由を知っているからだろう、困ったような申し訳なさそうな顔をする時がある。
佐伯くんの怪我をしないようにしている立ち回りは、そういうこと…なんだろう。
…怪我がないのは嬉しいことだけど、戦ってる時に私のことなんて考えなくていいのに。
「ところで佐伯くん」
「うん？」
「土日どっちか、空いてる？」
「…空いてるけど、何かあった？」
「そう。ならいいわ。…言っておくけど、仕事は関係ないから。行きたいところ、考えておいて」
「……も、もしかしてデートのお誘いされて…ます？」
「…ええ。そういうことになるわね」
「ｽｰｯ……待って、今行きたいところの候補絞るから、待って…ほんとに。全然そういうの考えてなかった」
「いいわよ、今じゃなくて」
「家で考えると無限に悩むから、今決めさせてください…」
消え入りそうな声でそう言う彼の顔は、すでに明るく笑うヒーローではなく、ただの一人の青年だった。
赤くなっている顔に、こっそり安堵する。どうやら、落ち着かないのは、自分だけではないらしい。
「うーん、今話しかけに行ったら怒られますかね…」
「るべって勇気あるよね。絶対キレられるよ」
「傍目から見ると、すげー面白いことになってるな」
「いけ、テツ！！頑張るんや！！」
「二人とも可愛い〜。頑張れ〜」
「知ってる二人がいい感じやと、なんか照れてまうな…」
「テツ、オーバーヒートしそうで草」
バレていないと思っている7人は、後で説教するとして。というか、西4人はいつの間に来たんだ。
…今は、彼の答えをゆっくり待とう。そう考えて、頬が緩んだ。
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
