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照れくさそうにはにかんだAちゃんに内心悶えながら、平静を装った。
…装えてない？ないか。そりゃそう。こんな可愛い子を前にして冷静になれるやついないって。
「…あの、佐伯くん」
「ん？どうしたの？」
「……名前」
「名前？……あっっ、俺無意識に名前で呼んでた？？許可もとってないのに？？ご、ごめんっ！嫌だったよね…いつから呼んでたんだ…」
「えっと、今日はずっとAちゃんって言ってるわよ」
「…マジ？？え、本当にごめん。緊張しすぎたのか、全然気づかなかった」
「別にいいわよ。嫌じゃないし…。ちょっと恥ずかしいっていうか、びっくりはしたっていうか…慣れないから、一旦指摘しとこうと思っただけ」
そう言いながら、髪を揺らして目を伏せる彼女はやっぱり恥ずかしそうだ。
不快になっていなくてよかったと思いながら、でもやっぱりAちゃんが可愛くてニヤつくのを抑えきれない。多幸感でおかしくなりそう。
「じゃあ、これからも呼んでいい？」
「…好きにして」
「そっか？」
「……ん」
夕日が沈み始めて、夜の昏い空が顔出し始めていることに気づいて、ハッとする。
おっと、呼び出したのは僕の方なのに…。流石に今日は解散かな。
「Aちゃん、急に呼び出して本当にごめんね。もう夜になるし、今日はこの辺にしとこうか。…あとで連絡、してもいい？」
「いい、けど」
「…駅まで送ってくね。あっ、浮かれすぎで気持ち悪いかな、ごめ」
「謝らなくていい」
食い気味に被せられた声は凛としているのに、彼女の顔はどこか気まずそうというか、まだ恥ずかしそうなのが読み取れた。
「気にしなくていいから。…私だって、浮かれてる…し」
「！！」
「…行くんでしょ」
「うん！」
自分も浮かれているという旨を告げてから、じわじわと顔を赤くする彼女の愛おしさと言ったら、筆舌に尽くし難い。
そう離れていない距離を並んで歩くのに、目が合わなくて、髪から覗く白皙は変わらず赤に染まっていた。
自分の強欲さに苦笑しながら、口を開く。
「あの、手繋いでもいいかな」
「ぅ…いっぱいいっぱいになっちゃうって…」
「…うん」
「も、もー…嬉しそうな顔されると、本当に何も言えなくなるんだけど…」
「へへ、でも嬉しいから」
手を握ると、ついには耳まで真っ赤、無言になってしまった。
…少し前まで悩んでたのが嘘みたいだ。ただひたすらに、幸福感でいっぱいだった。
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
