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図星だった。
僕の反応を聞いて、図星なのを察したのだろう。カゲツ君がため息を吐くのが聞こえた。
…失恋したと落ち込んでいる俺を、激励する為に電話をかけたのか。そう納得していると、声に意識を引き戻された。
「あいつの好きなやつ、誰かわからんのやろ？」
「う、うん。流石に僕から聞くのは嫌がられるかと思って」
「……少しは自惚れてもええと思うけどな」
「え？」
「んで？あいつのこと、諦めるん？」
「諦める……？」
優しくて、強い信念を持ったかっこいい人。柔らかく笑った顔が可愛くて、ちょっと不器用でそっけない態度が多いけど、本当は世話焼きで心配性な人。
…僕が言えたことではないけど、そんな彼女は誤解されやすくて、優秀故に頼られることも多くて、傷ついていることを理解されていない。
あまりに長い時間、一人で立って、患者に寄り添うための最善の行動をとろうとしてきた彼女。
そんな人を、理解したいと思った。彼女が好ましいと思うのは、友人としてというだけではなくて。
…それなのに、この気持ちを諦められるのか？
答えは、NOだ。だって、彼女の悲しみも信念も理解してしまった。理解したいと願ってしまったのだから。
「…諦めたくない。諦めたくないよ、でも」
「“でも”ちゃうやろ」
「！」
「諦める気がないなら行ってこい。尻込みしてないで、あいつに全部言え。そんで、あいつの好きなやつが誰かちゃんと聞いてこいよ。…本当に失恋したその時は、ぼくが励ましたるからさ」
「カゲツくん…うん、そうだね。Aちゃんの好きな人に、僕は勝てないかもしれない。けど、ちゃんと伝えてくるよ」
「…おん」
その一言の後、彼との通話を切った。
確か今日、彼女は休みだと言っていたはずだ。
彼女にメッセージを送る。“時間ありますか、会えませんか”
脈絡のないメッセージ。それでも、カッコ悪くても。友達にあれだけ背中を押されたのに、何も言わないまま“失恋”なんて、笑い話にもならない。
既読がついた瞬間、心臓がドクドクと脈打った。
“会えるけど、どうかした？”…これからだろ。佐伯イッテツ。
近くの公園の場所を送って、来れますかと聞いてみると、肯定が帰ってきて、ひとまず待ち合わせの約束はできた。…覚悟を決めろ。
-
「…ま、失恋なんてないやろうけど。あいつら、お互い相手に好かれてるって気づいてないだけで、お似合いやし？」
――とある忍者の笑い混じりの独り言
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
