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『……いるにはいるわよ』
星導くんの言う“Aちゃんには好きな人がいる”
その真偽を確かめるために、動揺するまま彼女に聞いてしまった俺はバカだと思う。
しかも返答は、肯定だった。少しばかり気まずそうな、どこか曖昧な答え。でも“いる”という答えなのは確かで。
「はぁ〜」
自室で天井を見上げながら、ため息が溢れる。
俺の贔屓目はあれど、彼女は美人だ。少女のようなあどけなさの残る美しい容姿、少しばかりそっけないけど優しい性格、努力を怠らない真面目さ。恋愛感情でなくとも、彼女を理解すれば尊敬していくようになって、好意を抱くのは当然だと思う。現にマナ君、ウェン君、リト君、ロウ君、ライ君、カゲツ君、星導君だって彼女をリスペクトしていて、休みの日には遊んだりもするくらいには仲がいいし。
…だから、彼女の好きな人が彼女と少なからず関わるのなら、その人だって彼女の魅力を理解して、恋愛感情として好きでもおかしくはないわけで――
「あーっ、ダメだこりゃ！」
声が大きくなって、長いため息をついてからタバコに火をつける。
…自分にとって都合の悪い事実に、どんどんネガティブになってる。
よろしくない、よろしくない！こんな姿、Aちゃんには見せられない！
どうしようかな、気分転換に散歩でもしようかな。
そう思った時、一人きりの部屋に通知音が響いた。
「…カゲツ君？」
スマホの画面に映る文字列は、確かに“叢雲カゲツ”と書かれている。
不思議に思いながらメッセージアプリを開くと、「今電話出れる？」と表示される。
…どうしたんだろう。
電話できるよ、と返信するとすぐに既読がついて、電話がかかってくる。
「もしもし、どうしたの？」
「あー…うちのタコが余計なこと言ったらしいやん」
「タコ…星導くん？余計なことって…あ、もしかしてAちゃ、草凪ちゃんの…」
「…Aの前では落ち込んどらんふりしとったみたいやけど、今の様子やと落ち込んどるみたいやな」
「？…あれ、心配してくれてる！？え、急に電話って何かと思ったら…」
「……ところで、あいつに好きなやついるの本当かって聞いたらしいやん」
「え、なんで知ってるの！？」
「Aがそのことでタコのこと説教しとった…って、今はそんなことはどうでもええねん。あいつからちゃんと、好きなやつが誰か聞いたわけでもないのに、失恋したーとかなってるんやろうなと思って」
「うぐ」
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
