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大きな声を上げそうになるのを、寸前で飲み込む。
えっ、あ、そう見える？？嘘でしょ？
動揺のあまり、彼女をチラッと見るが、先ほどと変わらず愛想笑いのまま口を開いた。
「いえ、彼は私が護衛をお願いした者です」
「そうかそうか。君のような優秀な医者が、“高尚な人魚の末裔”が、人間と結ばれるはずもないか。では、君の活躍に期待しているよ」
「ありがとうございます。……ふぅ。初っ端からカロリーの高い…いえ、なんでもないわ。佐伯くん、私喉乾いちゃったから、飲み物取りに行きたいんだけど、君も飲む？」
「あ、うん」
歩く彼女の後を追って、彼女から手渡されたグラスを受け取った。
少し気分が落ち着いてくる。
…そういえば、さっき気になること言ってたな。人魚とかなんとか。話を蒸し返すみたいでアレだけど、聞いてみてもいいだろうか。
「あの…草凪ちゃん、答えたくなかったら答えなくていいんだけどさ…」
「何？」
「さっきの人、人魚がなんだとか言ってなかった？早口だったから聞き取れなかったんだけど…」
「…そうね。少し外の空気を吸いに行きましょうか」
彼女はそう言うと、バルコニーに向かう。
綺麗な空が視界いっぱいに広がって、穏やかな風が心地いい。
グラスに入ったサイダーを揺らして、彼女は口を開いた。
「私が人外の末裔だって話はしたわよね」
「うん。…もしかして」
「ええ、私のお祖母様が人魚なの。私の見た目は人間と変わらないけど、正真正銘人魚の末裔ってワケ。だから…あの人みたいな上層部の一部の人は、未だにうるさいのよ。…もう慣れたけど」
目を伏せる彼女の“慣れた”という言葉に、思わず反応してしまった。
ヒーロー達が傷つき続ける様を見て、それでも傷つくことに慣れないでいてくれた…他でもない君が、心無い言葉に慣れてしまった事が、どうしようもなく悲しくて、やるせない気持ちになる。
ふと彼女を見ると、既に彼女は空を見上げていた。
「…まぁ、あの人達が何を言おうと、私は私のやりたいようにやるけど」
「！…そっか。よかった、思ったより気落ちしてないみたいだ」
「当たり前でしょ？さ、人も集まってきたし、挨拶回りに行きましょう」
「うん」
きっと彼女は誰に何を言われても、自分の在り方を曲げないだろう。
…真っ直ぐな在り方がかっこよくて、笑顔が可愛らしい人。
ああ、彼女のことが好きだ。一人の友人として、異性として。そう自覚する。…眩しい人だな。
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
