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コンコン、とドアがノックされる。
着慣れないスーツはどうにか着られた…と思う。
返事をすると、ドアが開かれる。
入ってきたのは可憐なドレスを着込んだ、Aちゃんだった。…めちゃくちゃ綺麗だなぁ。
人魚を思わせるような、裾の広がったドレスを着た彼女は…人目を惹くだろうってことくらい、俺にもわかる。
今日は護衛として来てるんだから、しっかりしないとな。
「スーツのサイズは大丈夫そう？」
「う、うん。…草凪ちゃんすっごく綺麗だね！印象全然違うや…」
「…そう？」
「うん！目立つだろうなぁ…護衛頑張るよ」
「……そう気を張らなくてもいいわ。悪いけど、挨拶回りだけは付き合ってね。私の側をできるだけ離れなけば、自由に食事してくれていいから…。面倒事は起きないと思いたいんだけど…」
「わかった」
僕が頷くと、Aちゃんの表情が少し緩む。
…どうやら彼女も落ち着かないらしい。そういえば、行きたくはないって言ってたな。
嫌な思い出があるのだろうか。まぁ、彼女は優秀な医者だから、嫌々出ることになったんだろうな。
そう考えて苦笑して、そのまま廊下へと出る。
彼女の後ろを歩きながら、パーティーホールの眩しさに目を細めた。…絶対俺浮いてるよね。あー怖い。
流石に護衛を任されたのに、怖い怖いなんて言ってられないので、覚悟を決めて彼女についていく。
「佐伯くん、ペペロンチーノあるけど…確か好きだったわよね」
「あ、うん。好き」
まずは食事を楽しむことにしたらしい。ついたばかりだしな。
挨拶したい人もまだ揃っていないのだろう。そう考えながら、皿の上によそわれたペペロンチーノを頬張った。
うっま〜。
その時、よく通る冷厳な声が聞こえてきた。
「Aくん」
「…おや、どうも。貴方も来ていらっしゃったんですね」
「ははは、今回の会合は重要な意味を持つからね。一部地域で激化する被害の対策などを、水面下で探る者もいるだろうし。…私としては君がいるのは納得しかない。君ほどの優秀な女性が、この会合に呼ばれないはずもない」
「恐縮です」
他のヒーロー達が見たら、「うわ〜、嫌そう〜」と言いそうなほどに、僕から見てもあからさまに愛想笑いだ。…この人、確かお偉いさん…俺でも見たことある。彼女が苦手な人なのだろうか。
そう考えていると、お偉いさんが俺に気づいた。大事な話っぽいし、黙っとくか…。
「こちらの彼は…まさか、君の恋人かね？」
「！？！？」
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
